酸欠 | に・ぴ・こ・り・と

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至極個人的な日々の記録。

酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の技能講習を受けました。

座学2日と小芝居的な実技試験で3日間。まあ落ちないでしょう。これでとれれば会社でとった資格は7つ目。


7つというとけっこうあるようだけど、そのうち5つはこういった技能講習ものなので、特段どうってこともないです。

ちなみに今もっているのは、公害防止管理者水質1種、特別管理産業廃棄物管理責任者、第三種冷凍機械責任者、玉掛け技能、フォークリフト技能、床上操作式クレーン技能。がんばったのは水質一種ぐらい。

以前、臭気判定士と危険物甲種なんてのも受けましたが、がんばらなかったのでしっかり落ちましたね・・・


資格を持っているということは自分個人としてもプラスなので、こうやって会社の金で取得できるのはありがたいと思います。まあ、今の主業務ではなく副務的なものに関連するものが多く、ブルーワーカー的なものが多いというのが若干複雑ではありますが。

まあ、働かせてもらって贅沢は言えません。なんでもできるようにしとけということですね。

次はがっつり職務にど真ん中なやつを取ろうと思います。難易度はこれから調べますが、受験できそうな給水装置工事主任技術者、2級管工事施工管理技士、エネルギー管理士、2級電気工事士、空気調和・衛生工学会設備士を検討中。難しいのかな?


* * *


で今回、酸欠の講習を受けてきたわけですが、講義の中ではこれまで知らなかったいろいろなことも知れて、

なかなか面白かったです。

なので、せっかく受けてきたので、知識がホカホカしているうちにメモしておこうと思います。


◎昭和38年ごろ、バナナの熟成加工作業室中で酸欠事故が多発した時期があったらしい。酸欠技能ができるきっかけのひとつにもなったそう。バナナを青から黄色に追熟させる工程ではエチレンガスを使いますが、これと恐らくバナナ自体の呼吸作用で加工室内の酸素濃度が低下して、酸欠事故が起きていたようです。

バナナで酸欠!状況を考えれば至極ありそうですが、昔の人はまさかバナナで死に至るとは思いもしなかったでしょう。バナナの明るいイメージとのギャップにちょっとした意外性を感じました。


◎無酸素空気を吸うと2秒で死に至る、というのはうそのようで本当の話らしい。人間の身体は無酸素空気を一回吸っただけで肺の酸素分圧が一気に下がり、それによって反射的に吸気の促進を起こしてすぐに2回目の呼吸、これで即気絶、転落死・・・なんてこともあるようです。

脳は身体の総重量の2%程度なのに酸素要求量は全体の25%にもなるので、筋肉などに比べ酸欠の影響をもろに受けます。脳が酸欠になると、軽度なら吐き気や集中力の低下、頭痛など(高山病もこれ)ですみますが、重度なら意識喪失、痙攣を起こして、呼吸停止や心停止などを起こします。これら重篤な影響は酸素濃度が低いほどすぐに出るようです。怖いですね。

ちなみに長い間息を止められるひとが、酸欠雰囲気に強いというわけではないそうですよ。


◎硫化水素独特のゆで卵のような臭いは温泉を髣髴とさせ、なんとなくわくわくしてしまう僕ですが、やっぱりこいつも恐ろしいようです。

硫化水素は20~30ppm以上になると臭覚が疲労して慣れ、それ以上濃くなってもわからなくなります。さらに100~200ppmになると嗅覚が麻痺して臭いを感じなってしまいます。臭いによる警戒心が働かず、中毒の危険性が増してしまうのがまず恐ろしいようです。水に溶けやすい硫化水素は、ごく低濃度でも目がちかちしてかゆみや炎症を起こします。濃度が上がってくると、鼻腔や気管にも炎症を起こし、神経毒も出ます。へたすりゃ後遺症も残るんですよ。

温泉場近くには硫化水素臭のするところがよくありますが、硫化水素は空気より重い(空気を1として比重が1.18)ので、立ち入り禁止の場所などで窪んでいるところなんかに不用意に入ったりすると、硫化水素が溜まってて一発で中毒、短期間で呼吸麻痺、死亡・・・なんてことにもなりかねません。ちっちゃい子供がいたりしたら、相当注意ですね。子供が小さい頃は箱根の大涌谷には絶対行かないと決めました。昔、こんな看板 もあったようですよ。

今やよく知られた話ですが、硫化水素は去年一時流行った風呂場自殺にもよく使われたやつです。簡単に死ねちゃうんですね。


◎助けようとして一緒にやられる事例が多いのも酸欠事故。酸欠はなめられがちなのだそうです。

助けるなら十分警戒、可能ならすぐ換気、酸素濃度を測定、必要に応じて保護具を使って援助です。当たり前ですが、酸欠雰囲気に防毒マスクはまったく無意味。


◎昔、呼吸器というと酸素ボンベだったけど、今は空気ボンベが使われ、酸素ボンベはほとんど使われなくなったそう。純酸素はやっぱり身体に害ってことです。

酸素カプセルとか酸素バーなんてのも、本当に大丈夫なのかあ?と前々からいぶかしく思っていましたが、やっぱりまずいんじゃえの?と確信してしまいました。

(酸素ボンベを使わないものもあるようですがね。カプセルを高圧にして血液に酸素を溶かしやすくするのがポイントらしい)


◎AEDはすごい

AEDとはAutomated External Defibrillatorの略で、自動体外式除細動器のことをいいます。ショッピングモールや駅なんかで最近よく見かける、あの赤い箱のやつです。今回の講習ではAEDの使い方も習いましたよ。AEDはおかしくなった心臓の鼓動を救急的に戻す蘇生装置です。電源を入れると、言葉で案内してくれて、従っていれば誰でも操作出来るようになっています。電気ショックをするかどうかやするタイミングも、AEDが心電図を解析したりして判断するんですよ。すごい。

一次救命作業は、医者でなくてもやっていいんですが、こんなによくできた装置があるなら、ちょっと安心しますね。まあ使われなきゃ意味ないけど。



こんなところです。

これまで廃水処理施設の硫化水素の多い余剰汚泥を扱ったり、ボイラブロー水を炭酸ガス中和する装置や、窒素ガスで保管するシステムを設計したり開発したりしましたが、恥ずかしながら酸欠の危機意識は希薄でした。危ない事もしていたかもしれません。ぞっとします。装置の使い方についても、具体的な危険性についてもうちょい書かないといけないかなあという、意識付けになりました。


仕事も私生活の豆知識的にも、今回の酸欠講習は役に立ちました。受けてよかったですよ。