友人の結婚式での引出物はカタログギフトだったが、
そこで選んだのはヨーグルトメーカーだった。
こういうのは気になるけど自分じゃわざわざ買わないものじゃなきゃ。
その点でちょうどいいすきまだった。
ここ数ヶ月、休日は取手やら、東京に出てばかりだったけど、
昨日はたまたま家でゆっくりする時間ができた。
5月には届いていたが、なんとなく放置していたこれを、
急にためしてみたくなる。
仕事が一旦落ち着いて、余裕が出たからかもしれない。
近所のスーパーで種菌を買った。
みつけたのは協同乳業製ヨーグルト種菌。
裏側には、入っている菌の種類も書いてある。
L.derbrueckii subsp. bulgaricus
St.thermophilus
Bifidobacterium lactis LKM512
この斜体の独特な英文字の並びをみると、元微生物屋な俺には
なんとなく熱くなるものがある。
試しに3種の細菌について、ネットで調べてみる。
そしたら一番上の菌名、つづりが間違えていたりして。
正しくは、L.delbrueckii subsp. bulgaricus
これはメーカーに指摘しなきゃいけないな。
3種の乳酸菌は、ブルガリクス菌、サーモフィルス菌、ビフィズス菌。
ヨーグルトを作るスターター(たね菌)としてはメジャーなものだ。
ブルガリクス菌は種に酸味をつくり、サーモフィルス菌は主に多糖類をつくるらしい。
ビフィズス菌についてはKM512という菌株名がついているから、きっとこいつが売りに違いない。
実際PubMed で検索すると、協同乳業から数報論文が出ていて、この菌株の優秀さをいろいろと
証明して見せている。共同研究者はテレビにも出てくる理研の辨野先生なので、
けっこうちゃんとやっているに違いない。
ちなみにちょっとうんちくを書くと、ビフィズス菌は、パッケージには乳酸菌として一ション書かれているけど、
厳密に言えば乳酸菌とは分けて分類される。
乳酸菌は利用する炭水化物(主に糖類)の50%以上を乳酸にする細菌と一般定義されるのに対し、
ビフィズス菌は代謝経路が多少異なり、乳酸以外に酢酸もつくるのだ。
それから乳酸菌は通性嫌気性といって、多少酸素がある環境でも生きられるが、ビフィズス菌は
偏性嫌気性で、酸素を極端に嫌う性質があるという点でも、性質が異なっている。
つまりビフィズス菌は、酸素がほとんどない腸内なら乳酸菌より元気に生きられるのだが、
酸素のある外の世界ではあまり生きられない、内弁慶なやつなのである。
逆に言えば、ヨーグルトメーカーみたいな、全然酸素をとり除いていない条件下では、
この菌の生育はきっといまいちであり、いくらメーカーが声高にこの菌のよさをアピールしても、
プロバイオティクスとしてこいつをたくさん採るというのは、きっと難しい話のはずである。
まあ、そんなことはいいとして。ヨーグルトつくりの話である。
まずは変な雑菌を殺すため、ヨーグルトメーカーの内容器を沸騰したお湯につけた。
クリーンベンチでやっているわけでも当然ないので、ちょっとはのこってしまうんだろうけど。
数分漬けたあと熱を冷まし、牛乳と種菌を入れてよくかき混ぜる。
あとは容器に入れて、加温するだけ。
わかってはいたけど、拍子抜けするぐらい簡単であった。
こんなので本当にヨーグルトなんてできるのだろうか?
このまま一晩。
生まれて初めてヨーグルトをつくったちょっとした感動。
上の写真だとわかりにくいけど、器に移せばほら、ヨーグルト。
早速食べる。
おお。酸味がほとんどない食べやすいヨーグルトだ。
固まっているから酸はできている。つまり醗酵はすすんでいる。
けどすっぱみがすくないから、もしかしたら酢酸を作るビフィズス菌は、
やっぱりあんまり生きていなかったのかな・・・?
でもたべると健康になった気がした。後頭部あたりからじわじわ感じた。
これから、とりあえずしばらく毎日作ってみる。
牛乳を変えてみたり、牛乳を置く日数を変えたり、種菌を変えてみたり。
あとはできたヨーグルトを種菌にして、その条件を変えたり、ぬかや野菜を入れてみたり。
もっとおいしい条件ができないか、いろいろ探ってみよう。
実験みたいでかなり楽しみになってきた!