「うれしい響き」
喫茶店で、一人、じっとして周囲から耳に入ってくる会話を聞いていると、気づくことがある。
会話の内容に耳を傾けるのではなくて、その音声の抑揚だけで、内容がある程度わかってしまうようなのである。
うれしい時の会話って、女性に限らず、男性も、何であんなに音が高くて、ロングトーンになるんだろう。
「えー!」
「ほんとにー!」
「まじでー!」
「すごーい」
たーん。たん、たーん。
みたいな響き。
逆に、沈殿した内容の会話は、本当に、川底で石にぶつかり滞りながら、ゆっくり流れるような響きがある。
「あ、そう……」
「へぇ……」
「やっぱり、ダメかもしれない……」
ごそ、ごつ、ごそごそ、ごつ……ごす……。
みたいな響き。
このように会話から意味を省き、単純な音に置き換えても、人というのは、だいたいその内容がこういうことを話しているらしいと、わかってしまうのではないだろうか。
そういう実験とかしている人は、すでにいそう。
たぶんいる。いなきゃ、わたくしが、やりたい。
あちこちの席で、ぽつぽつ浮かんでは消えていく泡のような会話の中で一番目立つのが、どういう会話かと言うと、
ぐじぐじ、じゅくじゅく、ぐじゅる、ぐじゅる……とした会話です。
こういう音を伴う会話は長くなる傾向があるようだ。
一巡して、また、
ぐじ、ぐじゅ、ぐじゅる、じゅる……。ぐじゅ……。
内容については、あえて触れませんけど(実際、ほとんど聞いてない)。
できることなら、ノイズしか発せない人にはなりたくないな、と思う。
いや、自分なりがちなんですけど。
たん、たーん。