シンシア&サマンサ イン・ベッドルーム
シンシア 「ねぇサマンサ」
サマンサ 「どうしたの、あらたまっちゃって」
シンシア 「あたし、よくわからなくなるんだよ……」
サマンサ 「何よ、また男のこと?」
シンシア 「ちがう、ちがう。そんなんじゃない。いや……そうか、男のことも含むかもしれない」
サマンサ 「一体、何だってのよ」
シンシア 「あたしがいつも悩むことは一緒なんだ。いつもいつも同じことで悩まされるの……」
サマンサ 「話してごらんよ」
シンシア 「あたしは、いつもわからなくなるんだ。受け入れることと、つっぱねること、一体そのどちらが強さなのかってことが」
サマンサ 「え? 何の話なの。全然、話が見えてきやしないじゃないの」
シンシア 「いつもいつもそうなんだよ。いつもいつも同じことで悩まされるんだ、眠れないほどに」
サマンサ 「ちょっとシンシア。どうしたのよ。あなた、だいじょうぶ?」
シンシア 「……う……うう」
サマンサ 「シンシア……」
シンシア 「教えてよ」
サマンサ 「えっと、何だっけ。受け入れることと……」
シンシア 「受け入れることと、つっぱねることよ」
サマンサ 「そのどちらが強さかってことだったっけ?」
シンシア 「そうよ」
サマンサ 「う~ん。そうねぇ。話がねぇ……何もわからないもんだからねぇ……。う~ん」
シンシア 「……」
サマンサ 「くわしく話せないの?」
シンシア 「……」
サマンサ 「ねぇ、シンシア、ちょっとこっちに来て座ろうか」
シンシア 「なんなの?」
サマンサ 「いいからさ」
シンシア 「……うん(鏡台の前に座る)」
サマンサ 「鏡を見てごらんよ」
シンシア 「なんで?」
サマンサ 「いいから」
シンシア 「ねぇサマンサ。悪いけど、あたし、くだらないまじないだとかにつきあってる余裕はないのよ」
サマンサ 「いいからね。ほら」
シンシア 「だから、何なの?」
サマンサ 「鏡を見て」
シンシア 「何これ、何の映画の真似事なの? やだ、おかしいわ」
サマンサ 「あんた言ったろ。受け入れることが強さなのかどうとかって」
シンシア 「うん、言ったよ(鼻水をすする)」
サマンサ 「あんたに、そう思わせた場所を、もう一度ここで想像してごらんよ」
シンシア 「ちょっと、もう、ほんとに!」
サマンサ 「いいから、いいから、落ち着いて。くわしいことは私に話さなくていいから」
シンシア 「ここで?」
サマンサ 「想像してごらんよ。あなたが、今、まさにその場所にいるって……」
シンシア 「……」
サマンサ 「鏡を見ながらね」
シンシア 「……」
サマンサ 「どう?」
シンシア 「どうって!?」
サマンサ 「もしね、あんたの目にほんの少しでも怯えが映って見えていたなら、それは『受け入れる』ってことじゃなくて、誰かに大事なものをしっかりつかまれて、『見過ごしている』ってことなのよ」
シンシア 「何を!?」
サマンサ 「あたしには、わからないわよ。くわしい話も知らないんだし」
シンシア 「……」
サマンサ 「あたしに言えるのは、あんたの目に怯えが見えた時、それは受け入れるってことじゃなくて、ただ見過ごしている、やり過ごしている状態だってことだけだよ。そういうのは、寛容さとは言わないのよ」
シンシア 「あんたに何がわかるの!?」
サマンサ 「だから、あたしには何にもわからないって言ってるだろ、さっきから」
シンシア 「……!」
つづく
2010.9.29