ベットの横の棚からモンキーだけ取り出す。ゆっくりとゆっくりとすりガラスに映る人影から目を離さないように玄関に近づく。鼓動が早くなるのが分かる。自分の鼻息が異常に煩く感じる。人影は人形でも置いてあるのではないかと思うくらい動かない。

「誰だ」それが俺の発した精一杯の言葉だった。
「女に追われてて助けて貰えませんか」
女に追われてるとは全く説得力のない。それともこいつを追ってきた女が犯人なのか。
「どおしてこんな所まで追われてるんだ。お前が犯人なんだろう。」
ドア越しではあるが相手が少し俯いたのがわかる。
こんな山奥まで追われている割には妙な落ち着きを感じる。
「犯人って言うか、彼女に悪い事をしたのは確かですけどそこまででは無いとゆうか、すいませんお願いですから開けて下さい!」
俺の言う犯人とゆう意味を理解していないようだった。それとも理解していないフリなのか。
「開けられない。警察に連絡するからそこに居ろ。」
携帯で110番を押していると玄関の人影がいつの間にか居なくなった。
「しまった!」どちらの方向に消えたのかすらも分からない。風呂場の奥の物置に使っている部屋の向かいに裏口がある。そこはいつも開けっ放しになっていた。なんなら玄関も人が普段通らない事をいい事に開けっ放しにしてある。今玄関の前に居た奴も取っ手を回していたら俺の許可なんかなくても簡単に入れたのだ。取りあえず今のうちに玄関の鍵だけ掛けた。
あいつを探さないと。入ろうと思えばガラスを割って窓から入る事だってできる。

振り返ると今俺のいる所から廊下が見える。廊下の突き当たり左側に裏口の取っ手の出っ張りだけが見える。静かに取っ手が回りだした。