キッチンから続く廊下の突き当たり右手のドアの先がお風呂場になっている。
なんだかワクワクする。普段怒らないとんでもない事が起きているかもしれない。非日常的な、アメリカのスパイがいつの間にか隠れ家に使っているとか、まだ発見されていない恐竜のようなものが入り込んでいたり。そんなわけは無いと百も承知だが、想像しただけで楽しくなるものだ。
ハリウッドスターになりきって壁に背中を沿わせてゆっくり足音を立てないよおにお風呂場へ進む。
ドアの前まで来ると一旦止まり、刑事が犯人の忍び込んでいる部屋に突入するかの様に勢いよくドアを開けた。




小窓が空いている。
シャンプー、石鹸、ボディタオル。昨日俺が使ったそのままだと思う。無意識に使っているのでシャンプーのノズルの方向など少し違っても分からないが。ただ、違うことが、浴槽の淵に犬の顔が置いてある。

浴槽の壁を赤い血が流れている。もぉほとんど乾いたのか少し固まっているようにも見える。茶色い耳の垂れた小ぶりなかわいい犬。
顔だけで俺の事をしっかりと見ている。

目を反らせない
どおゆう事だ。何がどおしてこおなった。誰かが俺を困らせたくて度の超えた嫌がらせをしているのか。それしか考えられない。ここにまだそいつがいるのか?俺に対する嫌がらせのためにこんな姿にされてしまった犬がかわいそうだ。
手が震える。恐怖で手が震えるなんて初めてだ。

警察に連絡しないと。


固まった足をゆっくりと動かし、後ずさりのような形で暖炉の前まで移動する。



ピリリリリ



ソファにあると思っていたら朝から置きっぱなしだったのか携帯の着信音が寝室から聞こえる。
電話?誰だ?会社か?
携帯画面を開くと普段住んでいるマンションの隣に住む男の名前が映っていた。相手が引っ越して来た時に挨拶をされ、この地域に来たのは初めてで分からない事し友達も居ないから仲良くして欲しいと言われ、友達になるつもりは無かったが困った事があったら電話でもしてと、電話番号を教えていたのだ。あれから一年三ヶ月程経つと思うが電話なんかしてきたのは初めてだ。だが、それはどぉでもいい。こいつに今の状況を説明して警察を連れて来るように言おう。

「もしもし、あのさ」
「あ!もしもし!お久しぶりです!特に用事はないんですけど今何してなんですかー?」
もの凄く大きな声で話してきたので俺が話していることは全く聞こえて居ないようだ
「何してたって今ロッジに居るんだけど大変な事になってるんだ!直ぐに警察を読んで欲しい」
「え?ロッジなんか持ってるんですか?いいなー。誘ってくださいよー。」
なんだこいつは。空気が読めないとゆうのはとんでもない罪だと思った。
「いいから、警察だよ!いいよもぉ俺が自分で警察に電話すればいい話しだった。」
「えーいいですよー俺が警察呼びますけど、住所も知らないし、なんて言えばいいんですか?監禁?」
相手の男は少しバカにしたように喋った。もぉこいつでは無理だがこいつに警察を呼んで貰ってその間に俺は家の中に犯人が居ないか探そうと思った。
「住所は茨城県霞ヶ浦市ーーーー」

住所をいい終えてから何かが引っかかった。

何故こんなタイミングで電話してきたのか。もともと相手は夜型の仕事をしているらしくマンションでもほとんど会うことはなく、会っても挨拶を交わすぐらいだった。

「お前今なんで俺に電話してきたんだ?」

俺は落ち着いて冷静に聞いた。こいつが後を着けてきて今回の件を起こしたのか。まるで見ていたこのようなタイミングでの着信。

「なんでって別に究極に暇だったってゆうか、ご飯でも行かないかなーって思っただけですよ。」

胸の辺りがぞわぞわする。こいつ何を考えているんだ?

「分かった。取りあえず今部屋に居ないからまた今度行こう。」

それだけ言って電話を切った。まだ相手は騒いでいたが頭が混乱している。

とりあえず警察に電話すればいいのか。その判断すらできない。

あいつがここまで付けてきて、こんなことを?
なんのために。あいつを怒らすようなことをした記憶がない。


だめだ。とりあえず警察。

コンコン




俺は固まった。か細いノックのような音が聞こえた。いるのか。玄関にこんなことをした犯人が。
呼吸も早くなり瞬きはほとんどしていない。
足音を立てないように静かに静かに寝室から玄関を覗く。

玄関の扉は一部すりガラスになっている。その上にレースのカーテンをしているが人の影がうっすら見える。武器を探さないと