私の中のもうひとりの私(1989) | waldeinsamkeitの木をみて森をみず。

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L’arbre cache souvent la forêt.
本と映画の備忘録。ときどき、禅問答(笑)

アメンバー限定記事は公式ジャンルと全く関係ない超つまんないぼやき内容なので、公開していないだけですσ^_^;ホントにホントにお気になさらずにσ^_^;

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私の中のもうひとりの私(1989)


大学の哲学教授マリオン
(ジーナ・ローランズ)は、
50歳の誕生日を機に、
新作の執筆のため、
ニューヨークの下町に
アパートを借りる。
ある日、疲れて居眠りをしている
彼女の耳に
隣室の精神分析医のもとに通う
患者の声が聞こえる。
聞くともなしに聞いてゆくうちに、
彼女にはその患者ホープ
(ミア・ファロー)の告白が、
かつての自分の苦悩と二重になり、
次第に「もうひとつの自己」を
見つめ直すようになる。


監督・脚本はウディ・アレン
撮影は「存在の耐えられない軽さ」の
スヴェン・ニクヴィストが担当。
出演はジーナ・ローランズ、
ミア・ファロー、
イアン・ホルム、
ジーン・ハックマン


自分が選択してきた人生に
不満もなく
むしろ理想通りだと思っていたマリオン。
自分が思っていた自分と
他人に映る自分像は予想外で
クレーバーだと信じていた自分を
コテンパンにする。


夢の中で父の恨悔を聴く。
一生を共に過ごした女は
深く愛した女ではなかった。
子どもに厳しくし、
仕事に没頭した
と。
さらに夢の中で
かつて心を揺さぶった
ラリーに会う。
彼はマリオンに幸せかと聞く。
「悔いはない」
と答えてくれといい
彼は妻に呼ばれ、フェイドアウト。
さらに悪夢は続く。
最初の夫から、
自分の死の原因は
マリオンに対する「窒息」と
告げられる。
徐々に疲弊するマリオン。


自分とは真逆の
心疲れた妊婦ホープに
惹かれていく。
クリムトの「希望」を
観て泣くホープ。
自分が選択しなかった人生を
まさにリアルタイムで
生きているホープ。
そして壁越し聴いた
ホープの言葉。
若さは本当に残酷。


アガサ・クリスティの小説
「春にして君を離れ」この物語も
幸福だと思っていた素敵主婦が
自分が真実だと思っていた真実が
偽りでできていたことに気がついて
ガラガラと崩れるお話。

信念や理想は人を強くするが
幸せにするかどうかは別問題。
一生、気がつかなけれは
それはそれで幸せなこともある。

50歳という年齢も微妙。
20歳そこそこまでは分別もなく
それまでの失敗や過ちは
笑い飛ばせることも多い。
そこからの30年。
意思を持って生きてきた時間を
否定するのは苦痛を伴う。

男性はそうでもないかもしれないが
節目の歳を迎えると
とても哀しくなる。
身体の経年劣化より
心の経年変化がキツい。
過去の後悔というより
漠然とした未来への不安。
ひとりで生きていけるほど
強くない自分が
ギスギスにみえ、寒々しい。
経済的に余裕がないのも
結構堪える。


だけどラストに
ラリーの小説を途中止めして
本を閉じるジーナ・ローランズの
美しさに
歳に負けない生命力を感じた。
ちょっと
がんばろ(^^;;


1度しかない人生
だけど
悔いのない人生を過ごすのは
本当に難しい。


回想シーンを中心に
静かな映像が美しい。
他愛のない雑談の中で
夫婦と性の語られ方がシニカルで
アレンらしい。
邦題はちょっと違う気がする。
マリオンの中には
「もうひとり」ではなく
複数の私であったはず。
原題のAnother Womanのほうが
しっくりする。
★★★★★