評論 No.0785 『エリジウム 2013年:アメリカ』 | Aruji-no 画廊

Aruji-no 画廊

独創世界『Aruji-no』の世界を絵画・文学で描く画廊です。

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 多少ネタバレあり。

 

 超々格差社会を描いたSF映画。

 

 宇宙に浮かぶ楽園のようなコロニーと、ごみと貧困と不条理がまかり通った地球。

 

 戯画化が前提のSFものとしては、とても分かりやすい構図があり、

 

 入り込みやすい作品でした。

 

 また、主人公が最初は体制側でありながら、事件などをきっかけにそれに疑念を抱くという形でなく、

 

 もう反逆的行動に出なければ死ぬだけという、生存をかけた動機が

 

 物語に余分なドラマ性を付けることを廃しており、

 

 感情的な芝居があまり好みでない僕としてはとてもそこが気に入りました。

 

 気に入ったという点であれば、

 

 エリジウムの防衛長官デラコートさんですね。

 

 密航者は容赦なく抹殺。殺す状況でないなら、即追放。

 

 御上にも敵視されるほどのタカ派ですが、

 

 ある意味、地球を見限った形で生きている層の人間としてはこれが正しい姿に見えるというか、

 

 何不自由ない生活と余裕が前提にあっての非難を浴びせる上層部の方々は

 

 彼女の思うような弱腰というか、気弱な偽善者にしか見えず、

 

 過激な方法を辞さないものの、彼女は筋の通った人間として見れて僕は好きでした。

 

 その分、後半で飼い犬に手を噛まれるような形で退場してしまったのは残念でしたね。

 

 最後、主人公マックスは自己犠牲的な選択を選ぶのですが、

 

 その伏線が、友達を得たカバの話。

 

 極限状況というのもありましたが、

 

 最後に彼がとったのは、

 

 自分の命ではなく、他者の命と恩師の言葉だったのは、

 

 その後の変革を目の当たりにしも、やるせない気持ちが拭えませんでした。

 

 その選択を先に目の当たりにした、闇商人のスパイダーが絶望し躊躇った姿も、

 

 マックスに対して、ちゃんと友情や仲間意識があったことを垣間見れていて、

 

 こういう何気ないシーンにも弱いんですよね。

 

 あと、明らかに死亡要因的な立ち位置にあるキャラが

 

 最後まで生き延びてくれるのも好きだったり。

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲