「あくろ兄ちゃん!早く起きないと遅れちゃうよ!」

目覚まし代わりのネリチャギを腹に食らい悶えている僕に妹がそう声をかける。

まだ朝の6時だって言うのになんだって言うんだ。

「今日は早く起きなきゃいけなかったんでしょ?」

そうだ、今日は大切な日。

ありがとう、とお礼を言うより速く部屋を飛び出した。

「もー、次からは自分で起きてよね!」

階段の上の方でそう言っている妹を尻目に風呂場に飛びんだ。

朝一のシャワーは冷たくて頭の中が冴えわたる。

丁度良いのでその冴えた頭を洗いながら今日の予定を考えた。

まず実家のお店に顔を出して学校に移動、それを10時までに終わらせて…

我ながら完璧なプランニング、死角無しとはこのことだ。

ん、そう言えば結婚が決まった姉ちゃんにも挨拶しに行かないと。

姉ちゃんは隣に住んでいる従姉なのだが、小さな頃から一緒に行動を共にしているので実姉と変わりない。

最近、ずっと付き合ってきたミノリさんとの結婚が決まったのだ。

正直僕も嬉しい。

姉ちゃんとミノリさんは高校の時からの付き合いなのでもうかれこれ7年くらいになる。

付き合い始めた当初からミノリさんには可愛がってもらったし、僕もミノリさんを慕っている。

そんな彼らが結婚を決めたのなら祝わない理由は何もない。

挨拶に行かなくては、と思いつつ行けず仕舞いで既に1か月。

幸い今日はミノリさんも姉ちゃんの家に居るだろうし、ある程度用事が終わったら挨拶をしに行こう。

それにしてもTUBAKIはダメだな、髪の毛がナヨナヨしてしまう、新しいシャンプーを買ってこよう。

風呂を出ると愛犬のポン太が待ってましたとばかりに脚にジャレついてきた。

血統書付のポメラニアンなのだがどうもデカイ。

豆柴を凌駕するその大きさ既にポメラニアンのそれとは違う。

なので彼が脚にジャレついてくると重いし痛いし邪魔だ。

蹴っ飛ばしたくなる気持ちを抑えつつ彼のテリトリーである台所を抜けると居間だ。

居間には親父がデンと椅子に座っていた。

むぅ、朝の特等席が無い。

お早う、と声をかけ洋服に着替え濡れた頭のまま朝飯を作りに行った。

冷蔵庫の中を見ると実家の店から持ってきたであろうホッケが生のまま袋に入れられてあった。

朝は魚だな、時間はあまり無いが儂はホッケが食べたいのだ、今。

居酒屋の息子に産まれて良かったと思える瞬間だ。