選び続けたわけじゃないのに、気づけば全部引き受けていた人生
あらすじ
「離婚してもいいんだよ。」
病室の外で、義母にそう言われたとき、イチカは泣いた。
余命半年の夫。
六歳の娘と四歳の息子。
浮気、暴言、揺らぐ結婚生活。
それでもイチカは、自分から壊す選択をしてこなかった。
誰にも弱さを見せようとしなかったイチカが、職場の喫煙所でぽつりと本音をこぼした相手がいた。
年下の後輩、森くん。
真面目で、穏やかで、メガネの奥から心配そうにこちらを見る男だった。
相談のつもりだった。頼るつもりでもなかった。
それでも、その関係は静かに形を変えていく。
まさか、その数年後に夫婦になるとは、そのときの私は知らない。
あの喫煙所の一言が、その後の人生の形を変えていった。
これは、選び続けたわけじゃないのに、気づけばすべてを引き受けていたひとりの女性の記録である。