おひさしぶりです;


放置しててすみません・・・泣







やっとNO.6の最終巻を読みました




あらすじはこのブログの「NO.6」の紹介を見てください^^















NO.6は、小学生のころから大好きな小説で、


いままでいろいろ読んだ中でも


特に大切な小説です。



終わってしまうのがとても悲しくて、


読むのにかなり勇気がいりました。





以下ネタバレを含みますのでお気をつけ下さい。



























































矯正施設の崩壊。


それはNO.6の崩壊へと兆しを意味するもので、


その炎を見つめるイヌカシの心が大きく揺れたことに、


何とも言えない気持ちになりました。


手放しで喜べない。


いままで裏切られたり騙されたり、


そういう世界で生きてきたイヌカシが


絶対的なそれの終わりを簡単に信じられるわけがない。


それはきっと西ブロックに住む様々な人々に言えることで


また、違う形でNO.6の住人にも言えることだと思いました。


NO.6が終わったからといって、人の心が綺麗に切り替わるわけもなく、


これから壁の外と内に分けられてきた人々は


互いに歩み寄るために大きな努力を要する。


それもまた、No.6の大きな罪です。




楊眠のことは、最後まで気にかかりました。


復讐。


その方法を間違ったことに、彼はきっといつか気づくだろうけれど、


自分の過ちゆえに人が死んだこと。


それをこれからも背負わなければいけない。


火藍の言った、


「あなたはNO.6ではなく、人間なのでしょう」


という言葉が、とても重く感じました。


楊眠は人間として家族を愛し、


人間として家族を奪ったNO.6を憎み、


なのに。


簡単にその線引きは越えられる。


それは今を生きる私たちにも言えることで、


なにを正義とするのか、


今自分が人間であるかを、


確認しながら生きなければいけないと本当に思いました。





そして紫苑とネズミ。




沙布との約束。


生き残った者として。


NO.6に代わって、どんな世界を創るのか。


それは背負うには、あまりに大きなものだけれど


紫苑はやり遂げてくれるだろうと思います。


紫苑はすべてを許すような聖人ではないし


時折人間として危うくなることもあるから、


間違いを犯しそうになることもあるかもしれない。


でも、ネズミという存在や、イヌカシや火藍がいれば


人間として踏みとどまることができるだろうなと。


語られないこの小説の先にそんな紫苑を想いました。




ネズミと紫苑は、ずっとそばにいる者同士ではなかったけれど


互いの存在は、互いに必要なもので、


それぞれ違う場所で生きながら


ふと相手を想う、そんな関係は


なんて尊いのだろう。









大きくその存在を私に残した物語でした。


これからも「NO.6」は、私のどこかに残っていてほしい。






ひさしぶりに本の紹介です^^







「坊主の坪」


コロリに怯える江戸の町に暮らす、奉公人のおつぎ。


主人のつくったお救い小屋で、せっせと働いていたある日、


旦那様がお救い小屋で掛け軸を広げているところを見つける。


その掛け軸には、実に面妖なものが描かれていて・・・




「お文の影」


岡っ引きの政五郎に持ちかけられた相談は


長屋に住む老人から不思議な相談を持ちかけられる。


子どもたちの影が、ひとつ多いというのだ。




「博打眼」


ある朝、醤油問屋近江屋に、「あれ」がやってきた。


慌て怯える家族や奉公人たちは


娘のお美代には誰もそれがなんなのかを教えてくれない。


手習い所の帰り、


「あれ」が気になって仕方がないお美代に


狛犬の声が聞こえてきて・・・。




「討債鬼」


手習い所の深考塾で働く元お武家の青野利一朗。


教え子の信太郎を殺してくれと、


信太郎の家、紙問屋の番頭に頼まれる。


驚く青野に、信太郎の父親に命令されたのだという番頭。


なんと、通りすがりの坊主に


信太郎が討債鬼という妖だと言われたからであるというのだ。




「ばんば憑き」


婿養子となった佐一郎は、妻のお志津と湯治の旅をしていた。


雨で足止めされていた旅館で相部屋となったひとりの老女が、


お志津が酔いつぶれ寝静まった夜、


老女の泣き声に気がついた佐一郎に、ある話を語り出す。




「野槌の墓」


柳井源五郎右衛門は、娘の加奈から


よく知っている猫のタマが猫又であるといわれる。


驚く柳井に、加奈は続けて


そのタマがあるお願いをしたがっているというのだが…。










江戸を舞台とした短編集でした。



私が特に好きだったのは、


「お文の影」、「討債鬼」です。












以下、若干ネタバレがあるかもしれないです。



















「お文の影」は、切なかったです。


長屋の子どもたちの楽しそうな様子と


影だけが遊びに参加しようとしている様子が


より対照的でした。



幼い子供には生きる場所を選べないのに


誰もが生きる場所を与えなかったことから


生まれてしまった悲劇。


江戸時代だけでなく、それは今でも多々あることです。


十も超えていない子どもが持つ欲なんて


「生きたい」「愛されたい」の二つくらいのはずなのに


それすら得られないのは、おかしい。




哀しい余韻は残るものの、


最後は優しい終わり方でした。













「討債鬼」は過去に何か抱え持った青野利一朗が


信太郎を守るために奮闘します。


この話に出てくる坊主は


宮部さんの他作品にもでています。


なんて迷惑なことをしてくれたんだ、と思う反面


この人自体は憎めない、そんな人です。



「お文の影」を連想させる、親と子どもの話でした。



通りすがりの坊主の言葉なんかで


自分の子供すら


自分のために、店のために


殺そうとしてしまう父親。


妖の怖さではなく、人間の欲の怖さがありました。



途中、青野の過去も明らかになります。


あまりに哀しい、苦しいもので


青野のなかで薄れはしても


一生消えはしないだろうと思いました。


その時に感じた無力感を思い起こしたくないためにも


今回ここまで必死になったのではないかと思います。



父親が自分を殺そうとしていることは知らない


信太郎は、とてもいい子でした。


まじめで、病の母親をいたわる優しさを持ち、


父親を慕っています。


青野がこの件を解決しようとする際、


信太郎にあることを確認する場面で


この子がいった言葉があまりに優しくて


号泣してしまいました。


その言葉はぜひ読んで探してみてください。













特に好きだったのはこの二つですが


他も勿論おもしろかったです。




「坊主の坪」では無条理な怖さがあり、


「博打眼」ではちょっと怖くて、


でも狛犬たちとの抵抗が力強く、


「ばんば憑き」は人間の恐ろしさと哀しさがあって、


「野槌の墓」は、最後に優しい気持ちになれました。




さすが宮部さん、と読み終わったときに


感動してしまいました。




憧れの小説家さんです。









読んで絶対損はないし


期待以上の作品なので


ぜひ読んでほしいです!






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