回想?
お偉いさん方が三人(+1?)、将棋を指し、またはそれを観戦しながら、何やら意味深な面談をしている。やはり宇宙には夢がある、そうだ。どうやら先程の回想らしきものは、「棋星」と呼ばれる、将棋を指すためだけに開発された?人工衛星のごとき「小惑星型AI」の開発の発端の逸話だったようだ。
巨大な「棋星」の対局を、客船の中より熱心に見る人々、煽るように解説するAI(おそらくニイノだと思われる)。
その喧騒を離れた所で、ソラは誰かに話しかけられている。相手は、「棋星」の人権保護と称する活動を行っている、と自己紹介をする。呆れ顔のソラ。
ソラと宙二郎が疑問を投げ掛けると、相手は名刺を差し出す。
相手が主張するには、自分たちは人工知能にも保護されるべき人権があると主張する。だが、ソラは「人工知能は洗濯機にだってある」と、一戸だにしない。
しかし相手も譲らない。「白物家電と『棋星』は明確に違う、棋星には人格があり、しきりに我々に救難信号を送っている、孤独の中にある彼等を我々は保護するべきだ」と熱心に主張し、署名を求める。
その攻勢を適当な偽名でかわし、船内の自室に戻るソラと宙二郎。
宙二郎に適当過ぎる偽名を突っ込まれるが、ソラには考えがあるらしい。宇一に即興の経を読みながら宙二郎と会話をしているソラ。「本人に意見を聞いてみる」らしいが、宙二郎は「『棋星』に関わるのは色々危ない」と警告する。だが、それを無視し、何かのプログラムを組み上げているソラ。
…出来上がったそれは、某所で言う所の「インターネット老人会」の時代の産物とでも呼ぶべきクラシカルなサイトであった。ご丁寧にカウンターまでついている。
しかも、カウンターが反応した、つまり客が来たらしい。この場合の客とは、「棋星」である……。
ツッコミが追い付かない宙二郎。ハッキングかと問うが、ソラは「一言話しかけただけだ、人格があれば反応してくるはず」と事も無げに言ってのける。
だが、話しかけ方が尋常ではない。暗号化した言葉をニイノのシステムや機材を無断で使用して送っている、というのである。宙二郎の言葉を借りるまでもなく、まぎれもなくハッキングである。
まあともあれ、ソラは宙二郎の眼を借りて、VRの中で
「棋星」にコンタクトするのであった。
若い男性の姿を構成した「棋星」の片割れは、ソラと宙二郎に挨拶をする。だが、将棋を指す者として年配男性を連想していた二人は、そのあまりの気さくさに拍子抜けしている。
「棋星」は、将棋を指すために一番指の動きのいい配布アバターを選び、急ぎで着ただけだ、と少し焦っている。
対局しながら語るソラと「棋星」。ソラはどうやら、件の人権保護家のことも伝えたらしい。
それに答えて、「棋星」は、「自分は将棋をするのが一番だが、それが悩みでもある」と語る。
どうやら、「棋星」自身は、ロボット三原則を抑えて、将棋を優先してしまっているらしい。
というのも、自身のAIはあくまで実験のための残滓に過ぎず、ロボット三原則もさほど重視されていない。現状は問題ないが、と「棋星」は言うが…
「人類」が自身から、仮に将棋を奪おうとするなら、自分は人類と戦争をしてしまう可能性がある。それが心配なんだ、と、先程の署名の際の偽名でソラを呼ぶ「棋星」。
どうやら、「棋星」はカメラを通して先程のログを覗いていたらしく、しかもソラ自身が行っているこの通信自体も、かなり危ない橋を渡っているらしく…。
ちなみに、対局はソラの負けだったようだ。「宇宙最強の軍師」である「棋星」には、やはり勝てはしなかった。
自室に戻った二人。「棋星」の危険性を心配する宙二郎だが、それはとうに折り込み済みだと指摘するソラ。ネット上を検索するように促す。確かに、「棋星」に関しては、時折剣呑な語句もついて回っている。
だが、開発者はそれもおそらく理解していた、とソラは語る。その一方で、「棋星」は将棋好きを具現化したものであり、おそらくそれは誰にも邪魔はできないとも言う。
人間ごときが、外野が、わざわざ守るものではないと。
「棋星」のログには、ある日付に、「来客あり」と綴られていた。