☆最終列車
夜のメトロにたたずむ最後の恋人たち。
二人は最終列車をたった今、乗り過ごしたところだ。
手にした切符に記された行く先は「エルドラド」の文字。
券売機に落ちていた一枚の裏返しの切符。偶然拾い上げ、目にしたその文字が、二人を夢見させた。
彼らは信じたのだ。この地上より美しい世界が、どこかにあると。
「次の列車がきたら、俺についてくるかい」
「ええ、どこへでも」
ホームには駅員の姿も見えない。時間の歯車が、通常とは別の軌道を描いたように非現実的だ。
「ホントに電車は来るのかな」不安げに寄り添って彼女は問いかける。
「来るさ、見ろ。時刻表を」
見上げた表示板には、あるはずのない次の列車の到着時刻が記されていた。
その時、ホームに列車の轟音が近づいてくるのが聞こえた。
「乗り遅れるんじゃないぞ。俺たちの未来に賭けて」
「チャンスは一度きりってわけね」
二人は決意をこめて、全身に力をこめた。
END
作者コメント
最終列車に乗り遅れたことは、まだありません。