興奮の一夜だった。


夕方5時。須磨浦の松林の斜面に着くと
すでに泯さんは、そこにたたずんでいた。


田中泯さんの踊りを見るのは今回が2回目。
舞踏も数回目で踊りに触れてから浅い。


松林には須磨浦からの浜風が強く
日が傾きかけて肌寒い。


お、プロカメラマンの平間至さんがパシャパシャ撮影
しているではないか。


誰が合図するでもなく、ゆっくりと
流れるように場踊りが始まった。


先月末に京都で見た踊りと同じく
田中泯さんのステップは切ない。
なんだか切ない歩みなのだ。


うじゃうじゃ鯉が描かれた着流しが
風に押される。
黒い羽織は風になびく。
切なくもあり、力強くもある歩みを
下駄がささえる。


風を受け、土に転がりもがき、立ち上がろうとして倒れ
斜を駆け上り、転がり落ち・・・。


もしテーマを付けるなら???「人生」か?


踊りが終わり、田中泯さんが目の前にいる。


踊り終わって最初の第一声は私に向かって
「踊ってるときパトカーの音が聞こえたけど
僕じゃないよね。」って。


しばしその場で田中泯さんと観客の即興の座談会になった。
目の前に田中泯さんがいる。


「踊ってて警察には何度も通報されてるから怖いんだよね。
何が怖いって、警察が俺の目を見て普通じゃないかって
言われるのがイヤなんだよ。」
と、先ほどのパトカーの音について語ってくれた。


また土方師匠の話も出た。
「ステージに入ってから踊るんじゃ遅いんだよ。あなたはどこから来たの?
って舞台裏から来たことになっちゃうでしょ。
違うでしょ、僕達は踊りの国から来たんでしょ。
って師匠の土方は何度も言ってたね。」


「そういった意味では、いつ踊りが始まっていつ終わっているのかわからない。
もしかすると生活でも踊っているのかもしれない」と。


今日の踊りのテーマについて質問されると
「テーマは全然決めてない。あえて言えば、自分のいろいろ過去とか
・・・自分自身かな・・・」と。
あながち私が考えたテーマは外れてはいなかったかなと。


興奮冷めやらぬ火照った顔に、須磨浦からの

ちょっと冷たい潮風が気持ちよかった。


打ち上げ会へと続く。興奮その2へ続く。