数年前の話です。父がまだ存命中の話。

 

父が通っていたデイサービスで
コロナが出た。

そのタイミングで父の体調が悪くなり、
病院へ連れて行った。

 

コロナの可能性があるということで、
別室で待機。

長い時間、ただ待たされた。

 

やっと医師が来たと思ったら――

父を一目見て、
怒ったような口調でこう言った。

「こんなの老衰でしょ」

その一言だけ。

 

診察は全くせず、
そのまま帰っていった。

正直、頭にきた。

 


 

確かに土曜日で、

緊急外来で忙しかったのかもしれない。

でも、だからといって
あの態度はないだろうと思った。

 

しかもその医師、
普段から母が通っていた泌尿器科の医者で、
もともと態度が悪い人だった。

 

いつも不機嫌そうでこちらが気を遣わなければならないような人。

そんなに嫌ならさっさと医者辞めればいいだろうといつも思ってた人だ。

 

「こんなの老衰でしょ」その言葉を聞いた瞬間、
「ぶん殴ってやりたい」と思うくらい
怒りが込み上げた。

 

幸いだったのは、
父がそのとき補聴器を外していて、
その言葉を聞いていなかったこと。

もし聞こえていたらと思うと、
本当にやりきれない。

 


結局、その後は看護師さんが対応してくれて、
コロナの検査をして、しばらく入院することになった。

 

医師ではなく、
看護師さんの方が
よほど「人」を見てくれていた気がする。

 

あんなのは医師ではないとすらおもった。

人を悪く思いたくないが、自分の中では「あの人」ではなく

「あんなの」と言う言葉が湧いてきたくらいだった。

 


人は、年齢でひとくくりにされる存在じゃない。

その人には、その人の人生があって、
その人なりの状態がある。

「老衰でしょ」

その一言で片付けていい命なんて、
あるはずがない。

 

あの日のことは、
今でも忘れられない。

あの医師への怒りもずっと残っている。

 

医者だから偉いのか?
そんな疑問が、頭から離れなかった。