　現在、大倉集古館で開催中の『特別展大成建設コレクションもうひとりのル・コルビジエｰ絵画をめぐって』展を観てきました。

　日本でコルビジエといえば何と言っても国立西洋美術館です。建築家として17資産が世界文化遺産に登録されているコルビジエですが、本展はタイトルにあるようにコルビジエの建築家としてではなく、画家としての側面に焦点をあてた展覧会です。大成建設の貴重なコレクションの中から約130点の作品が紹介されています。私も国立西洋美術館で何点かコルビジエの作品を観たことはありますが、これだけのまとまった数を見るのは初めてです。

　なお本展は展示の都合上、２階が初期作品、１階が後期の作品になっています。制作年代順にご覧になりたい方は２階から先にご覧になるほうがいいでしょう。そのほうがコルビジエを理解しやすいように思います。

　初期作品から観ていると、コルビジエの関心が構成にあったことは明らかです。枠組みといってもいいでしょう。四角い枠組みの中に如何に事物を収めるか。初期作品では枠の中にさらに枠を描いて物をおさめようとしたり、テーブルという枠を描いて、その上に物を収めています。この辺りが建築に通じるところなのでしょう。

　恐らくですが、コルビジエにとって平面絵画作品は、３次元の現実の設計図のようなものなのでしょう。作品の多くが白黒の輪郭線で組み立てられていることも、設計図の図面線であることが考えれば納得がいきます。

　同時にコルビジエが関心を持ったのは“比率”でした。本展でも紹介されているモデュロールという「人体の寸法と黄金比から作った建造物の基準寸法の数列」です。この数学的な比率と絵画的な構成力からコルビジエのあの美しいモダン建築の数々が生まれたのでしょう。

　本展では絵画だけでなくコルビジエの建築についても地下展示室で紹介されています。コルビジエの全貌を知るにはまたとない機会といえるでしょう。

大倉集古館

「大成建設コレクション　もうひとりのル・コルビュジエ～絵画をめぐっては８月１２日まで開催中です。

240709

偉大な建築の源泉を観る『もうひとりのル・コルビジエ』