徳島県鳴門市にある大塚国際美術館を観てきました。

 この美術館は大塚製薬などを有する大塚グループが創立75周年を記念して設立した世界初の陶板名画美術館です。雑誌などでも行きたい美術館に選ばれるほど人気かつ有名な美術館です。

 特徴は展示作品すべてが大塚オーミ陶業の特殊技術によって複製された「陶板」だということです。つまり全部焼き物なんですね。古代から現代に至るまでの西洋芸術作品を原寸大に「完コピ」した陶板が並んでいるわけです。

 「えっ?コピーなの」と思うなかれ。現物を見たことがある作品もありますが、再現度はなかなかのものです。

 なにしろ1,000点の作品があるので、とても全部を紹介しきれません。私は12時頃入館しましたが、ざっと見るだけでも出館は16時。約4時間かかりました。これでも最後の近代現代は駆け足です。1点1点の説明書きも丁寧なので、まともに鑑賞していたら2,3日かかるでしょう。本稿では見どころだけご紹介します。それでも書きたいことは山盛りなので前後編でお送りします。

地下3階 古代・中世
 建物は全部で5層あるのですが、多くの見どころは地下3階の中世・古代だと思います。ここにはシスティーナ礼拝堂はじめ、さまざまな聖堂や壁画の複製環境展示が行われているからです。絵画であれば来日する可能性もありますが、聖堂や壁画はその場所に行かなければ見ることはできません。日本に居ながらにして、世界芸術旅行が楽しめるのがこのフロアの見どころです。



 ハイライトはやはり入口入ってすぐの《システィーナ・ホール(環境展示)》でしょう。あのシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの壁画が完全再現されているのです。その迫力たるや圧巻です。

 2018年大晦日の紅白歌合戦では米津玄師さんがこの場所から「Lemon」をライブ放送し話題となりました。



 ホールにはその米津さんの「Lemon」のレコードジャケット複製陶板も展示されています。


 陶板による複製なので現物では絶対にできないことが可能なのもこの美術館の面白みのひとつです。ここでは天井壁画の一部の原寸大複製が展示されています。間近で見ると、その巨大さに改めて驚かされます。しかも遠近を考慮して上半身が大きめに描かれているのです。この天井画を描くため上体をずっとそらして作業に取り組んでいたミケランジェロは終わるころには、すっかり腰を悪くしていたそうです。そりゃそうですよね。

 それにしても、この巨大な壁画を一人で描き上げるとは天才というより化け物です。現代の美術家が何人束になっても敵いそうにありません。

 ポンペイの遺跡で発見された「ディオニュソスの秘儀の間」も美術史では必ず取り上げられるものです。秘儀の内容は不明な部分が多いのですが、色鮮やかな赤が印象的な展示室です。
220511