木村拓哉さん、長澤まさみさん主演の映画「マスカレード・ナイト」を見てきました。

 格式高いホテル「コルテシア」。大晦日の夜には「マスカレード・ナイト」と呼ばれるカウントダウン・パーティが開かれる。そこでは参加者は全員仮装しなければならない。そのパーティに殺人事件の犯人が現れるという密告情報を得た警察は、刑事・新田浩介を送り込むのだが・・。

 ホテルは群像劇にはぴったりのシチュエーションです。何しろ多数の人間が出入りします。一方でオープンな空間でもないので密室ぽくもあります。

 本作でもその群像劇の良さはたっぷりと活かされています。何しろ豪華な出演者が次から次へと現れて目まぐるしいほどです。中には、えっ?これだけで出演終わっちゃうの、という方もいます。明石家さんまさんなんて、あれだけですからね。


 一方、サスペンスまたはミステリーと見ると、物足りなさも残ります。

 東野圭吾さんの映像作品を見ると、思いっきり謎をばら撒いて引っ張って引っ張って、最後の3分でバタバタをタネあかししておしまい、ということがよくあるように思います。

  本作でも最後に全てきちんと説明されるのですが、正直、殺人犯の動機とか、密告者の動機がいまひとつわかりません。いや、わかるように説明されてはいるのですが、理解・納得・胸落ちというところまでたどりつきません。

 仮面舞踏会で起こる事件ということに引っ張られて、なぜ人を殺すのか、殺さなければならないのかが、ふわふわしているように思います。

 またサスペンス、ミステリーとはいえ、実はこの作品にはトリックや謎解きがありません。多数の人間が出入りするのに何の手がかりもないので、警察はひたすら「なんか怪しい」だけで捜査しようとします。正直頭がいいやり方とは思えません。

 また客の無理難題を何でも聞くのがホテルマンの在り方だ、というような言があります。私が読んだリッツ・カールトン(客の無理難題をかなえることで有名)の方の話でも、突き詰めて言えば、客より従業員を大切にするとおっしゃっていました。それがリアルなのではないかと思います。

 とはいえ豪華出演陣を眺めているだけで楽しいといえる映画になっています。
210920