ヒュー・ジャックマン主演の映画「レミニセンス」を観てきました。

 戦争と水没で荒廃した世界。人々は過去の記憶にすがることに慰めを見出していた。特殊な装置で人々に記憶を見せるニックの元を美女が訪れる。彼女は亡くした鍵を記憶の中から探したいと依頼する。ニックはその女に惹かれるようになるのだが・・。

 予告編を見ていると、インセプションのような特撮技術を駆使したSF超大作映画のように見えます。実はこの映画は昔風のハードボイルド映画なのでした。

 美女に仕事を依頼された孤独な探偵が見た真実は、見かけとは全く違うものだった、というあのパターンです。

 今時、ジャズクラブのシンガーと関係を持つ探偵なんて設定自体、オールドファッションそのものです。

  全編通してニックの一人語りで物語が進行するのも一人称で語られることが多いハードボイルド小説風です。ダークな世界観はニックの心象風景そのものなのでしょう。

 その孤独でハードボイルドな探偵役をヒュー・ジャックマンが演るわけですから、これ以上のはまり役はありません。監督のリサ・ジョイがジャックマンを「私のミフネ」と言うのもよくわかります。

 美女役はレベッカ・ファーガソンです。そもそも目の前でレベッカ・ファーガソンに誘惑されて抵抗できる男などいるでしょうか。少なくとも私にはできる自信はありません。ニックが取り込まれるのも無理はありません。

 辿り着いた真実が残酷かつ受け入れ難いものであるのもハードボイルド的です。タフでなければ生きていけないのがハードボイルドの世界なのですから。

 リサ・ジョイ監督は「愛は祝福であり、呪いでもある」と語っています。愛という名の呪いにかかってしまった男の結末はぜひ映画館でご覧ください。
210919