皆さんは日本美術と聞いて何を思い起こすでしょうか。雪舟の水墨画?俵屋宗達の屏風絵?はたまた葛飾北斎の浮世絵?



 この本はタイトルどおり、日本美術を「縄文」と「弥生」という二つの文脈から説き起こそうという試みの一冊です。


 まずは、この書籍で紹介されている縄文時代の火焔土器を見てみましょう。



本書22ページ


 文様の複雑さ、造形の巧みさ、全体のバランス。すべてが一級品の作品となっています。もちろん国宝なわけですが、世界宝というものがあったとしたら、その一つになっておかしくないと思います。


 しかし、このような縄文土器の素晴らしさは長い間、認められていませんでした。本書によると、天皇のはじまりから語られるこの国の歴史では、天皇以前の文化は文化として認められていなかったとのこと。なるほどです。


 それを再発見したのが岡本太郎さん。私たちの世代では岡本太郎さんといえば、太陽の塔であり、「芸術は爆発だ!」のおじさんです。岡本さん自身、この縄文土器を見て「爆発」を感じ取ったのでしょう。


 美術は読み解くものだ、と言われ、この本も「読み解く」をタイトルにしているわけですが、岡本太郎さんは、全くの予備知識、先入観なしに縄文土器を見て高い評価をしています。この慧眼は素晴らしい。見習いたいものです。


 岡本さんは「肝心なのは我々側なのであって見られる遺物の方ではない」と述べられています。確かに作品自体は何万年も前から実在していたわけで、それをどう見て評価するかは我々に委ねられています。


 縄文と弥生の文脈については、本書を読んでいただくとして、大切なのは、それらをどう見るかは私たち次第であるということだと思います。


本書の解説で著者は、「本当に素晴らしい美術作品は実物を見ればわかる。そこに言葉はいらない。それが美術の力です。」と述べています。私も、その力を信じています。


200522