本展の見どころ

⒈古代ギリシアの赤絵式壺

⒉古代ペルシアの金属工芸

⒊ガンダーラ、スキタイなどの金細工

 

 「人、神、自然」とは大仰なタイトルですが、本展はおおよそ紀元前5、6世紀から紀元5、6世紀ぐらいまでの、主にエジプトや西アジアの偶像、装飾品、器、副葬品などを展示しています。カタール国の王族であるアール・サーニ陛下が収集されたコレクションとのことです。ここでは主に美術史的な観点からの見どころをご紹介します。

 

⒈古代ギリシアの赤絵式壺

 古代ギリシアの壺絵には、赤背景・黒人物像の黒絵(黒像)式壺と、黒背景・赤人物像の赤絵(赤像)式壺があります。本展では、紀元前300年頃の赤絵式壺が計6個展示されています。表面にはトーガのような衣を身につけた女性が裸の男性に食事やお酒を饗している様子が描かれています。副葬品として死後の世界でも饗宴ができるようにとの思いで作られたのでしょう。正直上手な絵ではありませんが、女性のトーガは、服の形やひだなどがわかるように描かれています。壺の大きさは80cmから1mぐらいあるほど大きいものです。これも死後の世界で食べ物や飲み物に困らないようにということでしょう。

 

⒉古代ペルシアの金属工芸

  美術史の教科書には、ペルシア美術が金属工芸や浮き彫りに秀でていたと書かれています。ここではアケメナス朝ペルシアなどのいわゆるリュトンと呼ばれる角を模した器の数々を見ることができます。そのほか船型の水差しやヤギとライオンを装飾に用いた水差しなどに精緻な金属工芸の技を見ることができます。

 

⒊ガンダーラ、スキタイなどの金の装飾品

古代においても、金は貴重な金属であり、金でできた装飾品は身分の高さを飾るもの。金でできたブレスレットや首飾りなど、1コーナーまるごと金の装飾品展示は豪華です。これ全部売却したらいくらになるのだろう、と思わず考えてしまいます。

 

 私が一番気に入ったのは、紀元1、2世紀の古代ローマの「イシス像」。イシスはエジプト神話の豊穣の女神です。高さ60cmほどの小さな像ですが、みごとなプロポーションに薄衣の表現も素晴らしい。後世の人々がギリシアの美術を手本としたのもよくわかります。

 

 この展覧会のチラシだけ見ると、仮面の展覧会のようにも見えますが、内実は古代の工芸品の実物の数々を見れる貴重な機会。古代の美術史を学ぶのにも役立ちます。

開催期間2020年2月9日まで。お早目にどうぞ。

 

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