ローテーション - 前編
ローテーションの季節が近づいてきました。
部署の異動をする弁護士達は希望部署を第3候補まで書いて事務所に提出します。
来年の2月に行われるローテーションによる新しい配属先はすでに発表されたようです。
配属部署が決まってもどの秘書があたるかはぎりぎりまで決まりません。
人事が正式に連絡してくるのは、前日だったりします。
(たいてい月曜日から替わるので前の金曜日に通知が来たりします)
決定されるまでにはいろいろ詮索があったり陰で政治的な駆け引きがある場合も・・・
さて、2年前のローテーションの時のこと・・・
私の上司4人のうち、弁護士一年生のアレンが別の部署に異動する予定でした。
通常ならアレンの代わりに別部署からやってくる同レベルの弁護士一年生があたる筈です。
新しく部署に入って来る弁護士一年生はディビッドとメリッサの二人。
来週からの新しい上司はディビッドかな、メリッサかな?
それとも3月まで待って司法修習生の面倒を見ることになるかな?
そんなことを考えながら金曜日の朝に出社すると人事から「折り返し電話して」というボイス・メッセージが入っていました。
「誰になるかな~」と思いながら人事に電話をすると出ません。
何度かけなおしても・・・出ません。
メールを出しても、返答が来ません。
人事が部署内の他の秘書達とひっきりなしに電話で話しているのは察せましたから、不在でないことは確かなのに・・・
何か私と話すのを避けているようです。
そのうちお昼近くになって真相がわかってきました。
アリシアがシニア・アソシエートのジェレミーの秘書をやるのはもう懲り懲りだ、この機会に他の弁護士と替えてくれと人事にかけあっているというのです。
アリシアは優秀なベテラン秘書です。
そのアリシアが1年で匙を投げたジェレミーは、聞く所によると前に所属していた法律事務所でも彼の秘書探しに苦労していたという専らの噂でした。
部署内の秘書達はいつもアリシアの愚痴を聞かされていたので、当然誰もジェレミーの秘書を引き受けようという人はいません。
人事が他のベテラン秘書達2、3人に打診したようですが皆NO!と言って断っているらしいことがわかりました。
うわわわわ・・・
なんかすごいイヤな予感です。
まさか私のところにお鉢がまわってくることはいくら何でもありえないはず・・
ペーペーの弁護士一年生の代わりに多忙なシニア・アソシエートをあてがわれるなんてワークロードを考えても普通ありえません。
それにジェレミーが不人気な理由の一つはネイティブでも手を焼くほどデクテーションがひどいからであって、ディクタフォン
が苦手な私とは誰がどう考えても最悪のコンビです。
でも・・でも・・
なんで人事はお昼になっても私に新しい弁護士の連絡をしてくるのを保留にしているのでしょうか?
秘書達の政治的かけ引きの犠牲にはなりたくありません。
早いところ人事と連絡をつけてすっきりさせなければ・・・
人事に電話します。
プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル
出ない・・・
プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル
無視されてる・・・
もしや、不安的中?
- 浦野 啓子, 村上 直子
- ツライ職場を乗り切る話し方