弁護士の心臓はツライよ | INDIGO DREAMING

弁護士の心臓はツライよ

入所して2年目の時だったでしょうか、部署内の若手のパートナー弁護士ピーターが職場でHeart Attack(心臓発作)を起こして病院に担ぎ込まれたことがございます。
長引いた社内会議が終わって、自分の個室に戻る途中に突然「うっ」となり胸を押さえたまま突っ伏してしまったのです。
私はもうその時刻には退社しておりましたが、たまたま残業していた同僚の秘書が近くにいてすぐ救急車を呼んだのでラッキーでした。
彼女が気がついた時にはピーターは口から泡を吹いていたそうです。

時間に追われて朝から晩まで働き詰めでストレスがたまり放題の弁護士は健康管理も大変です。
ピーターは運動はあまりしないし忙しくてランチはよく抜かすし、おまけにへビースモーカーでしたから不規則な生活のツケがまわって来たのも無理はありません。
私は労働時間が長いといわれる日本で朝から晩まで働いていた経験がございましたから、こちらの国に来た時に雑魚社員達の怠けぶりにはほとほと呆れましたけれども、どの国にも仕事中毒者はおりまして、厳しい競争社会を勝ち進むこちらのエグゼクティブの働きぶりは半端じゃありません。

私にとってことのほかショックだったのはピーターが私の夫と同い年だった事です。
まだまだ心臓発作を起こすような年ではないと思っていたのです。

ピーターは当時38才でした。

それなのに大掛かりなバイパス手術を行いかろうじて命が助かったのです。
もし運転中などに発作を起こしていたら自分だけでなく他人まで巻き添えにして死んでいたかもしれないのです。
いくら30代でも油断は出来ないってことですね。

職場に復帰してからのピーターはがらっと変わりました。
もちろん周りの同僚達も仕事をさせすぎないように気をつかっていましたが、たぱこもきっぱりやめ、食餌療法も行いストレスを溜め込みすぎないように気を使っています。
今、部署内のパートナーの中で一番リラックスしていて余裕があるように見えるのがピーターです。

ある意味、心臓発作のおかげで取り戻した人間らしい人生とも言えるのでしょうね。

著者: 安岡 博之
タイトル: 過労死・突然死はこう防ぐ―性格・体調・行動から、あなたの危険度を徹底チェック