教科書論争はいつの間にか下火になったが、いまはコロナ論争がかまびすしい。そこでも科学より声の大きいほうが正論になってしまう恐ろしさを国民は毎日、感じている。きっと次の選挙は大変なことになる。コロナには科学的に対処して欲しい。
 

教科書論争(2001/08/10初出)

 いったいどっちの言い分が正しいのか、みんなに決めてもらおう|という雰囲気になるのはちょっと危い。ことは教科書問題。科学的事実の評価は多数決で決めるものではない▲昨日、「香川の教育をよくする県民会議」(村瀬裕也会長)が県教育長に要請書を提出した。論議を呼ぶ「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書(扶桑社発行)を憲法の理念に反するとして、その採択をけん制する内容だ▲県内では採択の動きはないようだが、東京都教委が七日に養護学校など扶桑社版の使用を決め、八日には隣りの愛媛県教委も養護学校での採択に踏み切り、一方「つくる会」事務所が放火されるなど不穏な動きもある▲扶桑社版には文科省の検定段階で中国、韓国が不快感を表明して外交問題にもなっている。すでに市販されてベストセラーというから読んだ人は多いだろう。騒ぐほどではないという感想も多い▲しかしそれ以外の教科書は市販されないので優劣はつけ難い。書店には賛否両論の新刊が山積みだが、全部読むわけにも|と思う人には、「どうちがうの?」(夏目書房)と題した比較本が出て論争をあおるという具合▲ちなみにこの本では扶桑社版と他の七社を比較し、歴史教科書では四十七の論点で優劣を付けている。結果は扶桑社の九勝二十四敗十四引き分け。最大の違いは明治以降の日本の歴史、特に太平洋戦争のとらえ方にある▲すべての戦争は政治の失敗によって引き起こされる。論争は望ましいが、下らぬ論争はいい加減で終えてほしい。つくりごとの歴史から真理は学べない。教科書は専門家が科学的に選ぶのがよい。