20年前のSARSはコロナウイルスが何者かよく分からないまま終息した。そのため昨年からのコロナパンデミックでは見当違いの行動がたくさんみられた。SARSが自然に終息した理由は感染者の半数が死亡するという致死率の高さだ。死んだ人はウイルスを撒き散らさない。現在のコロナ禍では高齢者以外はほとんど生き残り、感染者の半数は無症状のままウイルスを撒き散らした。感染者が増えれば増えるほど変異型が次々に登場する。ようやくワクチン接種が進んでいるが、モタモタしているうちに早くも強烈な変異型が登場してワクチン効果が危ぶまれている。国民そっちのけで五輪開催のためだけに突然ワクチン接種に躍起になるような日本政府で夏を乗り切れるとは思えない。国民はこの結末をしっかり見届け、まともな政府を育てないと、近い将来にとんでもないツケを払うことになるだろう。

 

謎の沈静化の謎(2003/06/24初出)

 謎といわれた新型肺炎SARSの流行が沈静化した。遠い出来事のように思っていた香川県民も台湾人感染者の来訪が分かって大騒ぎした。事態は一段落したが、「謎」は謎のまま▲WHO(世界保健機構)によると被害の最も大きかった中国でも、ここ十日以上新しい患者は出ておらず、WHOはまず香港を「流行地域」から除外した。残りは北京、台湾(全域)、トロント(カナダ)の三地域だけ▲春先に中国の大流行が伝えられた時、疫学研究者は世界的大流行の危険を指摘したが、そうはならなかった。医療関係者の献身的努力を賞賛すべきだが、実はなぜ沈静化したのかが分かっていない▲日本ではSARSを「指定感染症」にして、厚生労働省を中心に香川など各県が今回の対応を検証して、対策を研究しているが、医療関係者の多くは、完ぺきな封じ込め策は無理と見ているようだ。理由はたくさんある▲一番の問題は特効薬が見つかってないこと。病原が新種のコロナ・ウイルスと分かってもワクチン開発には三年もかかる。さらに問題は免疫を高めた結果、発症時にかえって死亡率が増える可能性が指摘されていること▲感染ルートの未解明も制圧を困難にしている。人間以外の宿主としてゴキブリ、ネズミやハクビシンも疑われたがどれも確定はしておらず、現状では感染者を早期発見して隔離する方法しかない▲SARSウイルスは低温に強く、これから冬に入る南半球の地域で発生すれば、日本の冬も危険度は高いという。経済のグローバル化がウイルス拡散の原因だとしても、それを封じ込めるために世界はさらに連携するしかない。