こんな人もいた。

 

扇風機教授(2001/06/19初出)

 昔々、入試の合格ライン上に同点の受験生がたくさん並んで判定に困ったら、「答案を扇風機で飛ばして遠くに飛んだ者から選べばいい」と真顔で言った私大教授が本当にいた▲次々に明るみに出る国立大入試の判定ミス事件を聞きながら、扇風機教授を思い出した。実務担当者がその不見識に憤激して扇風機選別は実行されなかったはずだが、その教授は国立大から転身してきた教育学者だった▲これほど不遜な考えの持ち主が教育者として適切であるはずはないが、話を聞いた当時はよほど特殊な人物だと思った。しかし山形大、富山大、金沢大と入試の不祥事が広がるにつれ、だんだん本当に心配になってきた▲不祥事発覚はなぜか日本海側の国立大に集中している。しかし入試判定がコンピューター化され、配点が複雑化したのは全国どこも同じ。ミスを知りながら隠していた富山大のような例がまだあると考えるのが普通だろう▲文部科学省は「きわめて重大問題」としているが、受験生や家族の人生に負の影響を与えた責任は取らせるべきだろう。各大学の教授が私費で慰謝制度を作っても改善策にも教訓にもならない▲教授たちの行動を善意に解釈すれば、被害者への謝罪の思いとも見える。しかし現実の被害者救済には無意味な行動。「みんなの不祥事、みんなで責任」という発想は小学生のホームルームなみの発想というしかない▲被害者を救うには二度と不祥事を起こさない体制整備と責任の徹底追及しかない。倫理低下が指摘される政治家、官僚、医者、学者たちは自分の相手が人間であることを忘れている。扇風機教授はもういらない。