三位一体(2003/06/18初出)

 それにしても皮肉な名前を付けたものだ。地方分権をめぐる「三位一体の改革」が騒ぎを巻き起こしている。地方への税源移譲をめぐる論議の決着がつかず、とうとう首相の登場▲だれの命名か知らないが、ここで言う「三位一体」は「補助金削減」「税源移譲」「交付税見直し」の三つをワンセットに進める分権推進策。削減対象にされた事業は十一項目で計八兆六千億円▲地方分権は、いつまでも危機から脱け出せない日本を再生する最後の手立てであることは言うまでもない。明治以来の「親方日の丸システム」は戦争遂行には最適だが、国民の暮らしを本質から豊かにする制度ではない▲日本を再生するには、それぞれの地方がより大きな責任を果たすべきだが、自由を与えず責任を増せば、手足を縛って海に放り込むに等しい。そこでどれほどの自由‖つまり財源を与えるべきか、で政官財が騒いでいる▲もちろん財源は多いほどいい。ところが肝心の改革推進会議が先日、本格的な税源移譲を先送りする意見書をまとめたため全国の改革派知事が怒った。特に鳥取の片山善博知事は議長を務めた東芝会長の議事運営を怒り、不買運動まで口にした▲これでは「三位一体」が崩れる|という訳だ。ただし本来のキリスト教用語での意味は「神とその子イエスと精霊」はすべて同じ一つの神の別の顔という意味だから、ちょっと皮肉にも聞こえる▲つまり「国会議員と中央官僚と財界」はすべて同じ「中央集権丸もうけ組の別の顔」という意味で、その「三位一体」を証明した。今回は日ごろ冷静な真鍋知事も「けしからん」と怒っている。応援しよう。