にわかにうどんの故郷の英雄と呼ばれた岡田さんは首を傾げたことだろう。でもまあ縁がないわけではない。人生ってそんなもんだろうと思って精一杯応援したことを思い出した。

 

頑張れ子馬越(1998/06/10初出)

 これで会社を辞めた人も、結婚を考えた人もいるそうだから、やっぱりオリンピックもお辞儀する大イベントだ。サッカーW杯フランス大会がきょう始まる。ところで岡田監督が香川出身って知ってました?▲ほんの五、六年前まで日本の代表的プロスポーツといえば相撲と野球。そこにJリーグ設立でまたたく間にサッカーが台頭した。ちょうど政界再編と重なって、巨人軍も自民党も不滅じゃない、と妙に納得した人もいた▲リーグ発足後のW杯挑戦は「ドーハの悲劇」で夢と消え、四年後の今回もアジア予選前半で早くも追い詰められ、もはや絶望といわれた。そのどん底で日本代表監督に昇格したのが「香川県出身」岡田武史コーチだった▲異例の監督更迭劇の中で届いた知らせに本社も驚いた。サッカー協会や所属チームから取り寄せた経歴書にも確かに「出生地香川県」「香川県生まれ」。しかしだれも知らない。スポーツ担当記者も顔色を失っただろう▲調べて分かったのは、監督は大阪生まれの大阪育ちだが、本籍地は土庄町小馬越。祖父の代に大阪に移り、お墓は今も小豆島にある。しかし近親者はおらず、監督自身もほとんど里帰りしたことはない|近いようで遠い、ちょっと困った状況だ▲一躍スターになったからと、たちまち馴々しいのも気恥ずかしいし、といって知らんぷりも…どうしよう、と言ってるうちにW杯。ますます言い出しにくくて、こっそり応援になったのだろう。小馬越に横断幕は出ていない▲そうそうW杯で会社を辞めた人は休暇交渉の決裂。新婚W杯旅行を目論み、相手を探した不届き者は本社の後輩記者。ゼロ泊三日の強行ツアー抽選にももれた彼は馴染みの寿司屋で観戦するそうだ。なんでも主人の名前がカズ…アイツ大丈夫かなあ。とにかく、がんばれ小馬越。