そういえば、子供たちを脅かすこんな事件もあった。

 

本当の君は(1997/06/06初出)

 君にどんな言葉で話しかければいいのだろう。何度考えても、同じ答えに行き着いてしまう。本当の君は一番に子供を守るべき人なのに、なぜ君は子供を脅すのか。さみしい人だ▲高松市周辺で子供を脅かす事件が続いている。神戸の児童殺人事件のおぞましさが耳目を集めている時だから、みんないやな気分だ。なぜ脅かすのか。君もだれかに脅かされているというのだろうか▲君か、君たちか知らないが、とにかく君はサングラスをかけ、帽子をかぶり、刃物を持って、子供に近づき、逃げると石を投げ付ける。どんな苦しい人生だったか知らないが、そのままではいっそう貧しくなるばかりだ▲顔を隠し、時と所を選ぶのだから知恵はあるのだろう。人を脅すのだから人の心の痛みも分かるのだろう。県内の子供に対する「声かけ」型犯罪の増加は全国の事件の後だから新聞やテレビは見るのだろう。この欄は読むだろうか▲愛と憎しみは表と裏の関係だから、君が子供に近付くのは一番安心できる存在だからだろう。たぶん子供が君を脅かすことはないのだろう。それなのに君が子供を脅かすのは、君が本当の君に気付いていないからだろうか▲信じなくてもいいが、いつも期待外れの人生だったから、それなりに嫌な思いもした。ビルや道路の工事現場で、出前先の雀荘で、セールス先の商店で、男たちや若い女のさげすむ目付きや、あなどる言葉に何度も出合った▲バイトだからという逃げ道はあったが、ずいぶん腹も立った。人は身なりや肩書に頭を下げるという事実を前に、そんな貧しい男や女への報復を考えた。それは断じて彼らの真似をしないことだった。ロマンチックな結論だと笑う人もいるだろうが、本当の君は弱者を守るべき人のはずだ。