真実を知るのは本当に難しい。


QWERTYの怪(2001/05/22初出)

 「QWERTY」という文字を見て、パソコンのキーボードを連想する人は直感に優れている。最上段の文字を左から読むと「クワーティー」。英語版はほぼ百%がこのタイプ。当然一番使いやすい…?▲と思われがちだが、実は正反対のねらいで設計されたと知ると多くの人は驚く。こうした例が私たちの回りにはたくさんある。同じパソコンの世界でも一番有名なソフトが一番優秀とは限らない▲テレビでもビデオでも、いわゆる「業界標準」方式が必ずベストではない。ちなみにキーボードのQWERTY配列は「タイプスピードを抑えるために」考案された、適当に使いにくい配列だった▲話は半世紀以上前にさかのぼる。タイプライターが普及し始めたころ、メーカー各社は共通の苦情に悩まされた。タイプ技術が向上して速度が上がると機械がついていけず、故障が頻発し始めた▲タイプライターの改良が進められたが成果は出ず、緊急対策として考え出されたのが、タイプ技術の進歩を阻むキーボードの考案だ。QWERTY配列は一番よく使う文字を一カ所に集めて指を動かしにくくしたものだ▲本末転倒、一時しのぎの対策だったが、その後、猛スピードのタイプにも耐えられる機械が開発されても、一度定着してしまったQWERTY配列を変えるチャンスは巡ってこなかった。それが21世紀の今までそのまま残ってしまったのだという▲昨日から参院に舞台を移した与野党論戦では公共事業、特定財源など日本の常識にメスが入ろうとしている。特例法や緊急対策も一度始まると止めるチャンスはなかなかない。日本にはびこる「QWERTYのウソ」を正すチャンスを逃してはいけない。