2日続きで恥知らずな外交官の所業を記録することになった。本当に本当に残念だけど、この人たちを信用したら家族の命は守れない、と思ったことを覚えている。

 

恥辱の大国(2002/05/11初出)

 外務省は北朝鮮からの亡命者を見捨てた瀋陽事件を反省して、早速、対応マニュアル作りを検討しているそうだ。この国の外交官たちは特権三昧で頭がおかしくなったに違いない▲領土不可侵と同じく、外交公館の不可侵は世界の常識。武装警官だろうが、だれだろうが、許可なく敷地には入れない。たとえ十センチでも踏み入れば日本国内と同じに扱われる。それが世界の常識▲そこに逃げ込んだ者の扱いは日本国の名の下に決められる。ましてや泣き叫ぶ女性と子供を含む亡命者を、そのまま相手国の警官に引き渡すなど、独立国の外交官は無論、人間することではない▲人道をマニュアルで教えなければならないほど愚かな外交官は必要ない。経験がない、総領事が不在|外務省が並べる子供じみた言い訳を聞くと、こんな愚か者が周辺事態法や有事法制を議論していることに寒気がする▲世界には今も圧制に苦しむ人々がいる。そこから逃れようとする人々がいる。手元に一枚のモノクロ写真がある。今から十三年前、ハンガリーの国境に押し寄せた東独市民に向けて、鉄条網が開かれた瞬間をとらえた写真▲男、女、老人、子供|おびただしい数の人々が沈黙のままに国境になだれ込む様子が鮮明に写しとられている。肩を抱き合い、しかしみな口元をひき締め、だれにも笑顔はない。国を捨てるとはこういう思いなのだろう▲ハンガリーは軍事力を誇示する東独から猛烈な抗議を受けたが、一歩も譲らず国境解放を続け、民族を分断したベルリンの壁はその年のうちに崩壊した。小国ハンガリーの勇気に西独首相は涙した。今、日本は恥辱に涙している。