この破廉恥漢の後輩たちは今、ミャンマー国軍のクーデーターから再び目を外らせ、耳を塞ぎ、口を閉じている。まるで三猿だ。巷間伝えられたところによると、国軍総司令官と日本は特別なパイプがあるそうで、それを通じて解決の道を模索していると言う。「お主も悪よのう。ヒヒハハヒヒヒ」と戯れ合う間柄なのだろうか。彼らの先輩の先輩の先輩たちは第2次世界大戦でナチスの迫害から逃れて来た数千人のユダヤ人に対し、本国からの指令を無視してビザを発給した駐リトアニア領事代理の杉原千畝さんを外務省から追放し、戦後もイスラエルからの問い合わせに「そんな人物は存在しない」と公然と存在を否定した前歴の持ち主たちだ。どうしてこんな恥ずかしい職業に就きたがるのか、在外公館での貴族まがいの暮らしに憧れて入庁する人も多いと言う。エリート中のエリートだと言うのなら、その卓越した頭脳で凡才どもが驚嘆するほどの解決策を導き出して欲しい。できるものならやってみろ。

 

窮鳥懐に入らずんば(2002/04/10初出)

 いくら耳をふさいでも映像となった悲鳴は永遠に消えない。北朝鮮の住民五人が中国・瀋陽の日本総領事館に亡命を試みて失敗した。いや駆け込んだのに警官に引きずり出された▲昨日の一面にその瞬間の写真が掲載された。五人は家族。女二人と幼い女児、その前後を男二人が守るようにはさんで正門わきの通用口から飛び込んだ。幅わずか一メートルの空間が自由への道だった▲女二人と女児は、通用口付近の敷地内で取り押さえられた。男二人は制止を振り切って館内に逃げ込んだ。世界の常識では、彼らは亡命に成功したはずだった。彼らはともかく中国警察の入れない安全地帯に逃げ込んだ▲ところが総領事館は中国の警官が敷地内に入り、彼らを連行するのを黙認したという。いや正確には一応異議を唱えたが認めてもらえなかった。これはウィーン条約で「不可侵」とされている外交公館内の出来事である▲さらに無残なことは北京の日本大使館が本国への連絡で、彼ら五人は「敷地外」で拘束された|としていたことだ。政府はこれを「ささいな事件」にしようとしたが、報道各社に提供された一連の写真でウソが暴かれた▲日本政府はあわてて中国政府に、五人の返還を要請したが、もう後の祭り。彼らの収容所送りはほぼ決定的だという。いったいこのエリートたちは日本をどんな国にしようと考えているのだろう▲一方で靖国神社参拝や有事法制で周辺国に不信を抱かせ、他方で亡命者を見捨ててさらに不信を深める。「窮鳥懐に入らずんば」、この国のエリートたちは「あわてて外に追い出す」のだ。もはや彼らは日本人の代表ではない。