こどもの幸せ(2003/05/05初出)
こどもの日。毎年この日に合わせて子供に関する各種の調査が発表される。総務省によれば日本の子供の数は二十二年連続して減少した。香川県教委は讃岐っ子の体力が十年前に比べ少し低下|と発表した▲今さらの一大事ではないが、子供たちが健やかに育っているかどうかを、大人たちはいつも気にしている。数が減った、体力が落ちたと聞くと、少子化対策や健康対策に大きくうなずいてしまう▲子供の減少は大方の先進国に共通の現象だ。それとともに人口減少も珍しくはない。厚労省の人口問題研究所の推計によれば日本の総人口は二〇〇六年に一億二千七百七十四万人をピークに減少することになっている▲子供が減り続けることも予想されていたことだ。政治家の中にはこれを国力低下の要因と大騒ぎする人がいるが、日本の国土の狭さを考えると、人口減がそのまま日本の幸福を損なうとはいえない▲増減を判断する基準をどこに置くかで好悪の判断は変わる。ボールを投げる力と子供の幸福にいくらか関係があるなら仕方がない。しかしそんな話はあまり聞いたことがない。人口の増減と幸福もそのまま比例はしない▲二十世紀にはたくさんの戦争をして国力を増大させようと考える人がたくさんいた。昔の戦争では兵隊は消耗品だったから、人口減は大問題だ。ボールを投げる力が劣れば手りゅう弾が遠くに飛ばないからこれも大問題▲しかしそんな時代はもう終わった。幸福とは大きさや豊かさのことではない。推計通り日本の総人口が二一〇〇年に六千五百万人に半減しても、幸福が半減しない国づくりを子供たちにプレゼントしたい。