大方の予想通りグリーンスパン氏はFRB議長の5期目を引き受けて議長を20年も務め、史上最長記録を更新した。つまり、米国はその間、繁栄に次ぐ繁栄を極め続けた。同氏は今年95歳だが、今も経済アドバイザーとして活動を続けている。米国債について尋ねられた同氏の名言「米国債が債務不履行になる可能性はない。なぜなら米国はドルを刷ることができる」。しかし昨年からのコロナ危機については「対応を間違えると極めて危険」と警鐘を鳴らしている。相変わらずお金には興味がないのだろうか。

金融の神様(2003/04/24初出)

 どことなくしょぼくれた感じが名優ウディ・アレンに似ている。アレンが映画界の鬼才なら、こちらは金融の神様。この小柄な老紳士が米FRB議長。その再任情報だけで株が上がる▲ブッシュ米大統領は昨日、中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会議長のアラン・グリーンスパン氏を来年の任期切れ以降も再任させる意向を明らかにした。現在四期目ですでに在職十五年。五期なら史上最長記録になる▲ことし三月に七十七歳を迎えた同議長が最初に就任した時の大統領はレーガン氏。それからブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)と次々に大統領が変わってもFRB議長はこの人だけ▲一九八七年の就任直後に起きたブラックマンデー事件を鮮やかに切り抜けた手腕はもはや伝説と化し、彼がFRB議長なら大統領はだれでもいい|と言われるくらい、各界から信頼されている▲同議長は珍しい経歴のエコノミストとしても知られている。高卒後に音楽家を目指して地元の名門ジュリアード音楽院に入学。ジャズ・クラリネットの奏者としてプロ活動もした。スイング全盛の一九四〇年代のことだ▲経済や金融を学んだのはその後だから、ずいぶん後学だが、コンサルタント会社を経営していた時に、俳優出身のレーガン大統領に紹介したのが昔のジャズ仲間だったというから、どんな人生の回り道も無駄とは限らない▲もし五期目を受ければ後五年は彼が世界の金融を動かす。その哲学は「リバータリアニズム」(自由経済主義)。しかし年俸わずか二千万円の議長職で満足し続ける人だから、ただの優勝劣敗主義ではなさそうだ。実に興味深い人物。