ずいぶん意地悪なコラムを書いたものだと恥ずかしくなるが、現実は悪い予想の通りになった。一番悲しいのは役人たちは最初から最悪の結論がわかっているのに結果として何の抵抗もしなかったことだ。「僕たちはそんな立場ではありません」という論理は理解できなくはないが、そう言った連中が皆で天下りして、「そんな立場」をはるかに超えた報酬を手にして平然としている。権利は最大、責任は最小。暴走殺人運転の上級国民や知らぬ存ぜぬで国税庁長官に上り詰めた上級国民、首相の息子だなんて知らなかったと宴会三昧を繰り返していた上級国民。その発生源はここにある。近頃は子供達にまでそんな気風が広まっている。

 

おめでとう第2の国鉄(1997/04/23初出)

 おめでとう瀬戸大橋。瀬戸中央自動車道の通行車両数が昨日ついに四千万台を突破した。一九八八年の開通から九年。みんなで祝うべきだが、とてもそんな気分にはなれそうにない▲少し前にインターネット‖瀬戸大橋論を紹介した。ハイテク文明の偉大な発明も官僚ぐるみの「反社会的」価格設定の結果、無用の長物になるという話。最近はこれに加えて瀬戸大橋‖日本的ODA論も提唱している▲ODAとは「政府開発援助」の英語略。途上国に対する無償援助、技術協力や国際開発機関への資金提供のこと。先進国が途上国に手を差し延べるのはいい話だが、これに「日本的」とつけると少し印象が違ってくる▲ずいぶん以前からの批判だが、日本のODAはその多くがいわゆる「ヒモつき」。いくら金を出しても、金は工事を請け負う日本企業を通して日本に還流。現地に建物はできても本当の経済開発にはならないという批判だ▲瀬戸大橋もこれに似ている。今世紀を代表する巨大工事には一兆円を超える資金が投入されたが、その多くはゼネコンに吸収され、香川、岡山に落ちたのはそれぞれ数%。しかも現実無視のばか高い料金。地元は落胆した▲それでも本州と陸続きという夢に県民は酔った。それから九年を過ぎた今、あの橋は本当に四国のための橋なのかと疑問の声がある。「景気浮揚の化け物的投資」説、「架橋技術の実験橋」説。高い通行税で遮断する「四国関所」ともいわれる▲収支は一向に改善せず四千万台突破は四年半遅れ。つまり予測は二倍も外れた。残る二橋が完成した時、破綻の構図も完成する。数十年後に数兆円のツケを払うのはだれか。これほどの失敗をどんな言葉で祝えというのだろう。おめでとう第二の国鉄。