銃規制を訴えるバイデン新大統領の決心がどれほど固いのか、しっかり見てみようと思う。銃だけが問題でないことは明らかだけど、銃がなければ事態がいくらかマシになることも明らか。これまでの流れを見ていると破産手続きが進む全米ライフル協会RNAの反対が問題だったのではなく、それを盾に政治資金を得続けてきた共和党の問題だということも明らかだ。銃を放置して被害者を見て見ぬ振りを続けるその同じ共和党が、100万人に1人という副作用の新型コロナワクチンにイチャモンをつける姿を見て米国を信用する人が世界にどれだけいるだろう。銃に代わる知恵を彼らはまだ身につけていない。
 
アメリカの引き金(1999/04/22初出)

 それでもアメリカは銃を捨てない。コロラド州の高校で起きた乱射事件の死者は十三人、負傷者二十人以上という。きっとまた「問題は銃ではない。扱う人間にある」というだろう。アメリカは遠い国▲アメリカはいつも十年先の日本といわれてきたが、銃問題だけは違う。全米には二億六千万の人口と同じ数の銃がある。親たちは子供が中学くらいになるとその扱いを教える。「決して銃口を人に向けるな」と厳しく教える▲その厳格さは想像以上だが、それでも悲劇は起きる。米ニューヨークタイムズ紙によれば、一昨年は二件、昨年は四件、合わせて十二人の生徒や教師が学校で銃殺され、五十人近くが負傷した。今回はそれを上回る大惨事▲事件のたびに全米で議論が沸き上がる。今回もタイムズ紙のホームページには一晩で六百件を超える意見が寄せられている。大半は銃規制派だが、論点のすれ違う意見もある。その代表は「問題は人間の心にある」▲しかし「どんなに危険な武器でも正しく扱えば危険はない」という論理は、逆から見れば「どんなに安全な道具でも悪用すれば危険な武器になる」ということだ。残念ながら人類は、すべての人が正しく行動する社会を一度も実現したことがない▲子供の心に問題があることは分かっている。それは日本でも同じ。社会が病めば子供も病む。数日前の香川でも高校生ら六人が少年を死なせる事件が起きた。しかしまだ学校で自動小銃を乱射する子供はいない。理由は簡単。銃がない▲米国には二億六千万の銃とその弾丸を作る工場、それを売る店、そこで働く人々がいる。その政治的圧力は大統領さえ動かすという。米国人は銃で何を守っているのだろう。銃に代わる知恵がアメリカを支配する日のくるまで、きっと子供たちは引き金を引き続ける。