人間には2種類の人がいる。豊かな自然を見て、環境に最大限の配慮を尽くしたアースシップを建てるべき場所だと思う人と、監視の目を盗んで大きな穴を掘って産廃を埋めれば大儲けできると思う人。同じ人間でなぜこれほど差が生まれるのか、を真面目に考えないとイタチごっこが永遠に続くことになる。
アースシップと産廃の町(1998/04/22初出)
華々しく船出したあの「船」はどうなったのだろう。財田町に日本で最初の環境共生型モデル住宅「アースシップ」が誕生したのは五年前のことだ。その同じ財田町で豊島の悲劇が繰り返されていた▲うわさは以前からあった。財田町は第二の豊島、というとんでもないうわさだ。産廃があれほど騒がれていた時だから、ただちには信じられなかった。県警の強制捜査でようやく実態が明らかになる。うわさは本当だった▲不法投棄されていた産廃の総量は数万とも数十万トンともいう。現場からの報告では、縦横百五十×三十メートルの巨大な穴が視認された。深さ一メートル当たり五千トンとすれば、深さ二十メートルで十万トンを超える▲摘発された業者は仏事などに使うシキミ(シキビ‖樒)栽培の名目で開発許可を得た。豊島産廃も名目はミミズ養殖だった。しかし内実は無届けで花崗土を掘り出して売りさばき、その穴に不法投棄の産廃を埋めていた▲県は過去二年で二十回以上も指導したという。しかし業者は表面を覆土し、監視の目を盗んでは産廃を運び込んでいた。県と県警は豊島産廃でも他県の警察に摘発されるという大失態を演じたが、今回もその手ぬるい印象はぬぐえない▲県内にはほかにも同様な疑いを持たれている地区がある。地元住民は不安を覚えながら、ただ見つめている。なかには「問題があれば県が対応するはず」と答える人もいる。豊島の人たちも信じていた。ミミズ養殖を信じ、県の指導を信じていた▲財田町は豊かな自然を誇る町だ。米国から建築家を招き、リサイクルとエコロジーを徹底追及した住宅「アースシップ」を日本で初めて完成させた。環境論者を集めてシンポジウムを開き、全国に報道された。もう「大地の船」は沈んだのか。今度は何と紹介すればいいのか教えてほしい。