この時の日本は結局、何もできず、ただ傍観するばかりだった。今世界を騒がせているミャンマーの軍事クーデターでも見て見ぬ振りの対応に終始している。まるで児童虐待の啓発広告でACジャパンが痛撃した、目の前の悲惨事から目を背ける「見えないフリ」の大人たちそのままの反応だ。かつて町内の夫婦喧嘩を仲裁したご隠居さんはもはやどこにもいない。国民的コミュニティーはすでに崩壊。国際コミュニティー意識など最初からない。日本外交は私利私欲の塊。ユダヤ人を救出した杉原千畝を追放した外務省は今も健在だ。

 

シャロームとサラーム(2002/04/17初出)

 「最前線からの手紙」と題した電子メールが回送されてきた。最初の差出人はパレスチナで平和運動を続けるイスラエル人女性ギラ・シビルスキーさん。どんなことでもいい。手を貸して|と書いてある▲日付は四月十日。イスラエル軍によるパレスチナ全域への軍事行動とそれに反抗するパレスチナの自爆テロの報復合戦がエスカレートする中、ようやく米国が国務長官派遣を決めた直後だろう▲「友人たちへ 私が二週間の外出からイスラエルに戻って二日がたちました。自分が見聞きしたことを伝えます。私の目の前にはイスラエル軍がパレスチナ諸都市で展開している死と破壊の光景が広がっています」(要約)▲特に北部のジェニンでは死者数百人、負傷者数千人と報告。軍が救急車を阻止し、まだ人のいる家屋をブルドーザーで押しつぶし、一週間にわたり水道、電気を止めて被害を拡大|と指弾している▲無防備なパレスチナ市民への攻撃はもはや大量虐殺でしかなく、イスラエル軍将校でさえ「この映像が世界に発表されたら、われわれは巨大なダメージを受ける」(「ハ・アレッツ」紙)と証言したとも報告している▲ジェニン事件は日本でも報道されたが、詳細はまだ分からない。しかし彼女は言う。「今は分析している時間はありません。みなさんに懇請します。悲劇を止めるためにとにかく行動して下さい」▲あなたが考えつくあらゆる関係機関に「国際監視団派遣」を要請して下さい|と願い、憎み合う両国の言葉、ヘブライ語とアラビア語で平和を意味する「シャローム」「サラーム」で結んでいる。私たちは本当に無力なのだろうか。