ちょうど20年前のコラム。この総裁選で前評判を覆して当選した小泉純一郎さんの一人舞台はここから始まった。もう野党なんかいるのかいないのか、どうでもいい状況の中で、有権者のわずか2%弱の自民党員が内閣総理大臣の選出権を握るという結果だった。それならみんなで自民党に入ればいくらか想いは叶えられると歌を歌ってみた。そして今、自民党には菅首相の対抗馬がいない、という。2つの民主党は軍資金の分捕り合戦には熱心だが、どうやら政権を取る志も能力もない。だとすれば、再び歌うしかない、自民党に入ればこの世は天国、自民党に入ろう、入ろう、入ろう🎶

 

自民党に入ろう(2001/04/13初出)

 昔々、放送禁止になった「自衛隊に入ろう」という歌が流行した。「自衛隊に入ろう、入ろう、入ろう。自衛隊に入ればこの世は天国…」という歌詞。妙に明るい候補者を見て「自民党に入ろう」と歌った▲二十四日に行われる自民党総裁選の候補者が決まった。順不同で橋本龍太郎元首相(現行政改革担当相)、小泉純一郎元厚相、亀井静香党政調会長、麻生太郎経済財政担当相の四人。本命なし、決戦投票次第という選挙▲小泉さんは党内では「変人」とからかわれたほどの構造改革論者。亀井さんは景気浮揚優先で森政権の積極財政を推進した人。好対照の二人の立候補はよく分かる。しかし橋本さんと麻生さんの出馬は、よく分からない▲会見で橋本さんは「三年前の雪辱」を口にした。雪辱とは財政改革失敗で惨敗した参院選か、改革の不首尾を指すのだろう。個人としての能力は周知だが、一度失敗した人が同じ勢力を背景に登場しても多くは望めない▲プライドの高さでは有名な元首相らしからぬ決断。しかし麻生さんはさらに分からない。政策は亀井・橋本氏と大差なく、大転換を訴える立候補ではない。勝つ見込みもない。二人の立候補こそ派閥の論理そのものだろう▲国民から見れば、政策的には小泉、亀井の対決こそ総裁選にふさわしい。しかしそうならないところが自民党なのだろう。国が浮沈の瀬戸際にいたっても、まだ国取り合戦を楽しむ気分が残っていることには驚くほかない。だから「自民党に入ろう」と歌いたくなる▲一億二千万人の日本人のうち自民党員は約二百三十六万九千人。有権者だけとはいえ全人口の二%にも満たない党員だけが新しい日本の首相を選ぶ権利があるというのはどうも奇妙だ。それならいっそ国民こぞって「自民党に入ろう」と思わぬでもない。