あれから事態はちっとも改善していない。ところで20年前は日本古来の表記通りに魚釣り島と呼んでいたのに、いつの間にか中国風の釣魚島が広まっているのはどうしたことだろう。特にテレビがひどい。これでは中国の島ですと認めるような気分になっても不思議ではない。どこかに回し者がいるのだろうか。

 

魚釣島の勇者たち(2004/03/26初出)

 魚釣島。のどかな名前に似合わず、ここしばらく日中台の三国が角突き合わせる過敏症の島になった。七年前には目立ちたがりの衆院議員が上陸して日の丸を振ったが、同じくらいのばか者が中国にもいた▲中国の人口は日本の十倍以上だから日本の十倍の愚か者がいても不思議ではない。ちょっと心配なのは事件の起きた二十四日には冷静な様子だった中国政府が昨日になって「即時釈放」に「強い憤り」の香辛料を加えたものだから激辛になった▲日本の十倍冷静になってほしいとは言わないが、清国以来、百年以上も放置してきた無人島の海底に石油が眠っていると分かって、突然権利を主張するなどは、これからオリンピックを開催して先進国の仲間入りをしようという国の作法ではない▲上陸者の逮捕は行き過ぎ、という声もあるが、国際社会の常識に照らしても、国際法に照らしてもほかに方法はなかっただろう。領海を侵犯した北朝鮮からの不審船を機関砲で沈めた乱暴に比べれば十分に冷静の範囲だ▲魚釣島がどこの領土かは明白。明治二十九年三月の勅令で領土宣言してから、どの国も異論を挟まなかった。もともと石垣島民の漁場だ。その点は敗戦で取られた領土をただで返せと騒ぐ北方領土とは事情が違う。何でも一緒くたは恥ずかしい▲頼みの米国はようやく「日米安保は尖閣諸島にも及ぶ」と加勢したが、ずいぶん控えめ。急成長の中国市場が気になるのだろう。日本の右翼が火をつけた領土問題に油をそそいだ西村真悟議員は今、テロもどきの「建国義勇軍事件」にからんで反省中の身。忍耐力のない政治家の出る幕などもう見たくない。