これが23年前の霞ヶ関の常識だった。それを思うと総務省が首相の長男に絡む接待でズブズブになってしまったのは特に不思議ではない。それにしても山田広報官をはじめ役人どもの言い訳の上手なこと、厚顔無恥の白々しい言い訳に呆れ果てた人は多いだろう。そんなことばかりを学んで生きてきたんだな、と思いながら記録改ざんを指示されて命を絶つほど律儀な役人もいたことに改めて驚く。ただその人が霞が関から遠い役所に勤めていたことにも納得が行く。

 

霞が関の愚痴(1997/02/27)

 最近、霞が関で一番流行しているのは愚痴だそうだ。大蔵でも通産でも農水でも建設でも、どこもかしこも愚痴だらけ。政府が打ち出した公務員の綱紀粛正策が効いているらしい▲「学生時代からの親友でも、彼がどこかの業界の人間なら会う度にいちいち届けなければならない。親友ならおごったり、おごられたりするのは当たり前だが、それもできない」と嘆く。同情論もある▲たとえば「綱紀粛正策は、勉強会や講演会に伴う会食まで禁止し、会食で許されるのはコーヒーか日本茶までとしているが、これじゃまるで学校の校則。ここまでしなければいけないのか」。なるほど▲「官僚の他人との付き合いが民間人よりも厳しい制約を受けるのは当然としても、日本の贈答文化や接待文化と無縁でいられるはずがなく、官僚だけを別世界に置くのは無理がある」。なるほど▲さらに「政府がそうした習慣を改め、新しい生活習慣を日本社会に根付かせようとまで決心したのならいいが、そんな気概も哲学もなく、場当たり的な綱紀粛正策を打ち出しても意味はない」。なるほど▲「細かな禁止事項を定めるより、罰則を強化した方がいい。公務員の汚職要件を定めた刑法一九七条を改正して、職務権限を幅広く解釈し、収賄罪に問える範囲を広げれば、利益供与を受ける官僚はいなくなる」。なるほど▲しかし、ご説ごもっとも|とは思えない。その法改正を役人自らが言って出ないところを見れば愚痴はまだ、ただの愚痴。本当に仕事に支障の出るほど、役人を辞めたくなるほど困っていたら愚痴では収まらない▲その程度で大騒ぎするのは分かってない証拠だろう。こんな人に立場を理解させるには一切の贈答を禁止する法律を与えるしか方法はない。