こんな本が注目されるのは日本がいかに教育に不熱心な国かという証拠。先進国の中で大学生が借金で首がまわらないなんて国は米国と日本くらいだ。そんなだからかかった費用を取り戻すべく悪事に熱心な接待大好き官僚が続々と登場する。あーあ。ここしばらくの国政を眺めていると、本当にため息が出ちゃう。そういえば菅首相の大学選びも「学費が一番安かったから」だって言ってた。でももう十分取り戻したでしょ。そろそろ潮時じゃないかなあ。あーあ。
タダ卒(2001/02/26初出)
大学入試シーズンも中盤に入った。受験生は後ひと頑張り、しかし親たちの本当の苦労は笑顔の合格通知を受け取った直後から始まる。だから、「タダで大学を卒業する方法」(三五館)が注目される▲著者は群馬の予備校教師、吉本康永さん。自らも子供三人を大学に通わせ、その苦労の中でつかんだ「タダ卒」のテクニックをまとめた。「やりくり親子、意地と度胸の大作戦」の副題通り、親が貧乏でも大学は大丈夫▲たとえば旧文部省の調べでは、東京の私立で初年度にかかる経費は入学金、授業料、施設費、諸会費、実習費など合わせて平均約百二十七万三千円。これにアパート契約金や家具代などを加えると二百三十七万円になる▲このうえさらに月々の家賃や食費がかさみ、全国の平均仕送り額は九万六千円というのが相場だ。これはおそらく世界最悪の環境だが、これに恐れをなして「国立しか受験させない」と子供を追い込んでしまう親もいる▲しかしよく検討すると国私の差は昔ほどではなく入学金はほぼ同じ、授業料が年二十万円ほど高いが、一カ月なら一万七千円弱。つまり数日のバイト分だ。さらに慶応のように全学費を卒業後払いで貸す例もあるから国立有利も絶対的ではない▲著者が推薦するのはオーソドックスな奨学金の徹底活用。なかでも日本育英会の第一種、二種の併願は究極の裏技だという。国民生活金融公庫の教育ローン、大学の奨学金を組み合わせ、県人寮などを利用すれば、東京の私大も恐れることはない▲何がなんでも大学へという時代は終わったと思っていたが、最近は「特別な才能のない人は大学へ行くしかない」らしい。それなのに不景気と学資高騰で大学を選べない|では気苦労も絶えない。ここは一つ本気でタダ卒を学んでみよう。大丈夫、何とかなる。