ACTビル本格始動

第1弾 実験カフェ盛況!

新しい文化の発信拠点としてACTビルが本格的に始動しました。第一弾の企画は高松まつりにあわせて8月12日から14日まで1階ホールで開いた「チェアマンズカフェ」。各界で活躍するACT会員を中心とした7人がチェアマン(進行役)となり、一般の市民らとコーヒーを飲みながらジェンダーから地域文化、ワインまで幅広い話題に花を咲かせました。

同カフェは、新会員の栗生みどりさんが「香川を代表する魅力的な人たちと市民が気軽に語り合う場所を作りたい」と発案し、新規事業委員会が企画運営しました。各チェアマンとテーマは▽初日 アンリさん「ジェンダー/愛/映画」・るいままさん「『しねまシティ』の背景と音楽のある人生」▽2日目 小野修一さんと山口喜久一郎さん「新旧キャスターが語るローカルニュースとは」・森田桂治さん「アウトドア生活耽溺法」▽最終日 明石安哲さん「高松を世界一素敵な街にする法」・松崎晃さん「ロマネコンティはなぜ美味しいか」となり、各回とも15人前後の来場者で盛り上がりました。

初めての試みにスタッフが入場者数を心配する中、開店後は若い女性らが続々来店。初回担当のアンリさんが実体験に基づいたジェンダー論を語り始めると、女性らは真剣に耳を傾けていました。喜びや悲しみも包み込んだ真実の愛の姿に共感する声が寄せられ、会場は静かな感動に包まれました。ジャズピアニストの梅田玲奈さんのライブも毎日開かれるなど、新しい文化スポットの誕生を印象付けた3日間でした。

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▲RNCラジオの取材を受けるアンリさんと栗生さん(左から)。

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▲アンリさんのジェンダー論に聞き入る女性ら

魅力的なテーマが交差した3日間だけの幻のカフェ

ACTビルの有効活用を目的に6月からスタートした新規事業委員会。チェアマンズカフェを皮切りに、いくつかの企画も進行中です。チェアマンズカフェとゴスペルカフェ、シャッター画プロジェクトで中心となる3人の会員に思いを語ってもらいました。

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アーツカウンシル高松 新規事業委員会 
        サブディレクター 栗生 みどり

” Chairman’s CAFE”の目的は、「魅力的な文化テーマを持つ人」であるチェアマンと雑談できる機会を提供することにより、文化発信基地ACTを広く知っていただくこと、および作業所に通う人たちが描いた油絵とプロジャズピアニスト梅田玲奈さんによる連日のライブを通して、ハンディがあってもなくても芸術を表現し謳歌できるエイブルアートな空間を作ってみることでした。

大学卒業後、東京で映画の制作に取り組んでいたアンリさんには、映画への強い気持ち、ジェンダーを越えるという選択、愛に手を抜かない生き方をテーマに、心の風景を誠実に赤裸々に語っていただきました。

多方面で活躍中の吉田由美さんには、12年前の作品にもかかわらず今なお新鮮な課題を投げかける著書、香川菊池寛賞受賞小説「しねまシティ」の背景を語っていただきました。ファンにとっては、るいままワールドにどっぷり浸かれる堪らない時間となりました。

RNCの小野修一さんと山口喜久一郎さんには「香川の事件の裏側を暴いていただこう」と企てましたが、眩しすぎる山口さんを目の当たりにしてあっさりと方向転換。山口さんのキャラクターを掘り下げるという基本理念のもと、名物県会議員によるスペクタクルなお話や、精神科の女医さんによる障害者福祉の光と陰のお話も聞けた「テーマてんこ盛り」の時間となりました。

遊びの名人である森田桂治さんは多くの顔を持つ大物起業家ですが、中でも本気と思われる「海辺における拾得物蒐集家」としてのお顔を一般人には理解し難い「宝物」とともに披露していただきました。結果、氏のヴェールが一枚剥がされたものの、かえって謎は深まってしまったようです。

明石安哲さんによる「気候が温暖で災害が少ない風土が温和な人間を育むという説は非常に怪しい」という立ち位置からのお話は、同席者全員を「さぬきの謎」の世界に深く引きずり込み、「次のレクチャーが待ち遠しい」という強い気持に駆り立てました。

松崎晃先生には一度お聞きしたかった「ロマネコンティはなぜ美味しいのか」というテーマを提案。収穫年と品種と畑が同じで製造会社の違うワインを飲み比べることによって「どうして違うのか」を考えることのできた、幸運で素敵なフィナーレになりました。

こうして、一夏の幻のカフェはその3日間の任務を無事終えることができました。

ここにお心を寄せてくださった全ての方に心からお礼申し上げます。

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▲華麗なメロディーを奏でる ジャズピアニストの梅田さん(手前)

カフェでゴスペル

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アーツカウンシル高松 新規事業委員会
       サブディレクター 吉田 由美

ACTビルは「眠れる宝箱」だと思っている。間口のわりに深すぎる奥行きや、使いにくいキッチンはともかく、あそこのシャッターを開け、なにかはじめると、必ずたくさんの人が覗いていく。

通りのにぎわいがなくなったと言われて久しい商店街だけれど、そこを通る人たちは、この街に「なにか楽しいこと」を期待している。

 「カフェでゴスペル」は、この「眠れる宝箱」に命を与えようと考えた企画だ。
 歌を歌う。
 お茶をのむ。

別々の場所でやればすむことだが、お腹の底から声を出し、その日のストレスや不安が消えて気持ちがほぐされたときこそ、ゆっくり仲間や先生とお話ししたいと思うもの。

そのまま次の練習のことを打ち合わせたり、夢を語ったり、歌以外のことをおしゃべりしたり、歌を聴いてくれたカフェのお客様と触れあったり。

商店街の真ん中にある、あの場所を、そうした「人と人がふれあえる場所」にしたいと思った。

1回目(10月4日)の「カフェでゴスペル」には10人の歌好きが集まった。まだまだ初心者だが、講師をお願いした梅村健一さん・ミヒロさんの指導で、体中をつかって声をだしていく。楽譜や文字が読めない人たちに「歌」を使って神の心を伝えたのがゴスペルのはじまりと聞く。

ここは日本であり、教会でもないけれど、普通の人たちが心をひとつにしてハーモニーを作る喜びをしってくれれば、通じるものはあると思う。

この企画が続き、第1第3火曜日、ACTにいけば楽しい時間がまっているという風が吹くことを願いながら、「カフェでゴスペル」のバックアップをしていく覚悟だ。

「カフェでゴスペル」
日時:毎月第1・第3火曜日7:00pm~
会場:丸亀町ACTビル 1階
会費:2,500円(飲み物・ケーキ含む)
問い合わせ:090-7622-8916(るいまま)

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▲歌った後はゆったりカフェタイム

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▲エネルギッシュに指導する講師の梅村健一さんとミヒロさん

ACT・ビル正面のシャッターに絵を

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アーツカウンシル高松 新規事業委員会
       サブディレクター 阿河 淳也

丸亀町商店街内、ACTビル正面のシャッターに絵を描くという企画が進んでおります。アクト新規事業委員会がチェアマンズ・カフェ、ゴスペル・カフェに続き計画している活動です。年末までに活動をスタートして、現在の殺風景なシャッターを彩り、文化的な雰囲気漂う空間を作るのが目標。

ACTのアーティストによって、毎日少しずつ描かれていく絵を、一般の人々に見てもらうことを通して、ACTビルの存在やACTの活動に興味を持ってもらえればと思います。描かれる絵の図案は、新規事業委員会で会議を重ねて選考しております。できるだけ多くの人に楽しんでもらえるような絵で飾りたいと思います。

是非とも早々にスタートさせて、人々の目を楽しませるようなものにしたいものです。これから、さらなる活動を展開しようとしているACT美術部門の、また新たな一歩となるようなものにしたいと思っております。       (デザイン案)

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▲arcade

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▲water flow

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▲nike

“夢と未来”をはぐくむ演劇祭に

(財)高松市文化芸術財団 事業課
チーフプロデューサー
大森 誠一

なんだか、万博のキャッチフレーズのようなタイトルで恐縮ですが、本音です。演劇祭の魅力はなんといっても、その多彩さにあります。劇団や作品の名前もさることながら、個性にあふれた舞台が一堂に介する機会は、演劇祭ならではの魅力といえるでしょう。

昨年のサンポートホール高松の開館を機に、「高松市民演劇祭」から衣替えした「サンポート演劇祭」も第2回を迎え、今年も地元から劇団マグダレーナ、劇団銀河鉄道、劇団ドラマ・サロンの3劇団が参加。さらに、県外から小宮孝泰のひとり芝居と劇団青年団の2公演を招聘し、9月から11月にかけて開催されています。

すでに終了した公演もありますが、それぞれにタイプの異なる舞台で、演劇祭ならではの多彩な一面を披露してくれました。

小宮孝泰のひとり芝居『接見』は、主人公の国選弁護人が被告人の生き様を“写し鏡”にした哀感ただよう作品で、人情ドラマを得意とする水谷龍二の劇作と、コントからストレートプレイへの転進著しい小宮孝泰の演技がかみ合った舞台でした。

同じ法曹界を題材にしていたのが劇団マグダレーナの『9人のへらこいサヌキ人』。4年後に施行される裁判員制度をモチーフに、市井の人々が裁判員を経験する想定ドラマが裁判所の控え室を舞台に繰り広げられます。社会派ドラマを得意とする作・演出の大西恵は、法律という規範の中に生きながら、その規範から外れたり落ちこぼれてゆく現代生活の危うさを、ミステリーを交えた不条理劇として描いていました。

劇団銀河鉄道のミュージカル『MAO’05』は、讃岐にゆかりの深い弘法大師・空海の青年時代を、大胆なストーリーと音楽とダンスで構成した作品でした。作・演出の上村良介は、あえて時代考証的なストーリーよりも、迷い、戸惑い、彷徨う若者の生き方に共感を寄せながら、現代へと通底する物語に仕上げていました。巧みな歌詞とメロディー、それを立体化する振付や照明、舞台に登場しないスタッフの力量が随所に表れていました。

まだ、開催半ばではありますが、こうして各公演を観ていると、改めて演劇には多様な楽しみ方があることを痛感します。その楽しみ方を束ねる手法としては、今年の「サンポート演劇祭」は少し開催期間が長すぎたように思われます。次回からは、創る人たちの“夢見る力”と観る人たちの“楽しみ方”がギュッと詰まったような内容と方法を検討し、全国からも注目される「サンポート演劇祭」に成長してゆきたいと考えています。

サンポート演劇祭  れからの開催予定

◇劇団青年団『ヤルタ会談/忠臣蔵・OL編』
11月3日(木・祝)13時~ 第1小ホール 
◇劇団ドラマ・サロン『奉公さん』
11月20日(日)13時~ 第1小ホール
◆お問合せは、TEL 087-825-5010

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▲劇団マグダレーナの『9人のへらこいサヌキ人』

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▲小宮孝泰のひとり芝居『接見』

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▲劇団銀河鉄道のミュージカル『MAO’05』

地方都市から世界へ文化を発信

韓国の仮面舞フェスティバル報告 (前 編)

仮面を被った踊り手たちが目の前を舞う。怪鳥に襲われながらも、権力をかさに威張り散らし、最後には食べられてしまう支配階級の男性。老妻と若い愛人の醜い争い。李氏朝鮮時代の支配階級を痛烈に皮肉る韓国の仮面舞は、観客を笑いの世界に誘い、人間味にあふれている。

9月30日から5日間、四国学院大学の橋本一仁教授主催の「韓国イベント・文化観光2005」に同行させてもらった。旅行のメインは、仮面舞で有名な韓国中央部の地方都市、安東市で開かれた「国際仮面舞フェスティバル」(9月30日-10月9日)。重要無形文化財に指定された韓国各地の13仮面劇が出演し、アメリカやロシア、トルコ、ベネズエラなど15カ国の伝統的な仮面劇が参加した。大分県の神楽、沖縄の獅子舞など日本の4団体も駆けつけた。

期間中、人口約16万人の安東市を訪れる国内外の観光客は約70万人。4年連続で国内の最優秀フェスティバルに選ばれるなど韓国を代表する文化イベントだ。

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▲若い愛人と老妻の醜い争いを描いた仮面舞

アクトコラム エディンバラの林檎(明石 安哲) 
 

子ども参加オペラ「小さな煙突掃除屋さん」を終えて

実行委員長
アーツカウンシル高松音楽部門ディレクター 米田 優
まずはじめに、アーツフェスタ高松オープニング公演「小さな煙突掃除屋さん」6月11日公演が、ACT関係者皆様のおかげで無事に終了しました。ご協力ありがとうございました、深謝いたします。

私は、今回の公演は成功であり意味があったと思っています。前の原稿にも書きましたが、ある規模の公演を全て地元キャスト・スタッフで行うといった、全国的にも珍しい企画が実施できたこと、ACTとして誇りに思っていいのではないでしょうか。本番の舞台は、裏方から出演者まで全てが地元在住者でした。それに、本番舞台をご覧になった会員の皆様はご理解いただけると思いますが、舞台経験の無かった子供たちが、短期間であそこまで歌って演じられたこと、素晴らしいと思いませんか?

世界的に文化国家・都市と呼ばれている所がいくつかあると思います。それらもそう簡単・短期間に作られたとは思いません。小さな文化的な積み重ねが成しえた業ではないでしょうか。この公演に携わった人たちが全てですが、将来高松の文化発展に少しでも携わってくれる、その時にこの公演は本当の意味で価値あるものになっていくものと信じています。

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▲子どもと大人が一体となり、会場に感動を与えた「小さな煙突掃除屋さん」

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▲大舞台でのびのびと演じる子どもたち

アーツカウンシル高松 平成17年度総会

平成17年度の総会は6月5日、リーガホテルゼスト高松で開かれました。16年度の事業、終始決算の報告に続いて、少年少女合唱団育成事業や高松オペラシティプロジェクト事業などを柱とする本年度の事業計画案、予算書案を承認。役員の選任も行い、新しく小野修一、武智孝志の両氏が理事に就任しました。

会議後は、市議会議員や市幹部らも参加したレセプションが行われました。川島寿太鼓の華麗で勇壮な演奏に加え、食事が一段落した後には石井理事長が自ら指導する合唱タイムもありました。熱のこもった指導のかいもあり、短時間のうちに20代から70代まで約50人の混声合唱団が誕生しました。「みかんの花咲く丘」などの唱歌を次々と歌い上げ、出席者全員の心を一つにまとめ総会を締めくくりました。

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韓国の仮面舞フェスティバル報告 (後 編)

安東市は、朝鮮最高の儒学者で1000ウォン札の肖像にもなっている李退渓を輩出し、仮面舞など時代ごとの文化財も数多く残り韓国精神文化の首都とも言われる。

国際仮面舞フェスティバルは、今年で35回目の地元の民俗フェスティバルから仮面部門を発展させたもので1997年から毎年開いている。市内3カ所の会場の内、主会場の広さは高松市中央公園約3個分。4つのステージに加えてテント村が林立し、民俗文化の紹介、地域の特産品などの展示・販売にも力を入れる。

総事業費は日本円で1億円ほど。会場には英語や日本語などのパンフレットも用意され、日本語を話す韓国人ガイドは何人も常駐する。内容豊富な日本語のホームページでは動画も楽しめる。これまでは市がフェスティバルを主催してきたが、来年からは財団の運営になるという。

地域に受け継がれてきた仮面舞を通して、小規模な地方都市が世界の文化を招き、地域の文化を世界へ発信する。いまでは東アジア最大の文化の祭典を自認するフェスティバルの姿を35年前に誰が想像できただろうか。郷土の文化に根ざした地道な積み重ねはきっと花開く。高松での小さな試みも数十年後にアジア最大の祭典になっていてもおかしくはない。来年は、拡大発展できた秘密を探ってみたい。
                  (アーツカウンシル高松広報担当ディレクター 西原一成)

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▲会場のメインステー

アクトコラム 入り込み数で見る素材のポテンシャル(田尾 和俊)

アーツカウンシル高松 理事および役員、ディレクター 一覧

理事長   石井ルリ子
副理事長 明石安哲
       松崎 晃
監 事    関谷利裕
        中山千晶
顧 問    田尾和俊

分野 担当理事 部門委員長 副委員長 ディレクター サブD
音楽 石井ルリ子
佐竹一郎
若井健司
田中雅純
石井ルリ子 佐竹一郎
若井健司

石井真紀
関元直登
橋本貴久代
米田優
大山晃

藤村久美子
岸上美保
荒木誠一
平尾弘之
黒田正雄
演劇 大塚和明 大塚和明   山下聡  
舞踊 島田博美 島田博美 島田富雄 関口糸枝  
芸能 東原操山 東尾清穂   松岡芳子  
パフォーマンス 松崎晃 竹内守善   後藤朝子  
美術 松崎晃 竹内守善 多田善昭 中篠司 阿河淳也
生活文化 明石安哲 村川永子      
文芸 明石安哲 日下聡徳   水落博  
映像 小河雄磨 小河雄磨   中西博文 詫間タカエ
鑑賞 松崎晃 松崎晃      
総務 武智孝司
小河恵朗
武智孝司   明石万理 遠山真知子
渉外 明石安哲 明石安哲   西原一成  
DB 松崎晃 松崎晃   庵谷文博  
広報 小野修一 小野修一   西原一成 阿河淳也
新規事業 明石安哲
坂昭男
明石安哲 武智孝司 西原一成 栗生みどり
吉田由美
阿河淳也
能力開発 佐竹一郎
田中雅純
佐竹一郎 田中雅純 荒木誠一
大山晃
平尾弘之
 

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編集後記

瓦版の編集スタッフに強力な若手が加わりました。ディレクターの西原さんとサブディレクターの阿河さんです。2人は新規事業委員会でも主要メンバーをつとめ、このところお疲れ気味のACTにとって貴重なカンフル剤になっています。私も元気をもらっています。
(広報担当理事 小野修一)