村上隆を早くから天才と言ってきた私には、
なんだかんだ文句を言ってきた者は、
六本木ヒルズ広場正面に鎮座する眩いばかりの「お花の親子」に会えば
圧倒されるに違いない。
10mの高さにブロンズに金箔の一点の曇りのない、
これでもかと燦然と輝くオーラに、金箔で太陽光が何倍にも増した光線で、
汚れ切った惨めな自分を、隅々まで洗い流してくれる気がした。
そして、開いた大口から金の光線を四方八方に撒き散らしながら、
奈良東大寺の大仏を思い出した。
かつて金箔で覆われた大仏を前に、
人はこの世のものとは思わず平伏しただろう。
日本最大の高級ショッピングモールには、
最先端の美術の大文化ゾーン、森美術館と野外彫刻で演出する。
あくまで、ハイクラスのリッチさの名実の限界を突き抜けたのが、
この「お花の親子」だろう。
「お花の親子」が出現(~2021年9月26日/要チェック)するまでは、
ブルジョワの「スパイダー」が六本木ヒルズの看板作品であったが、
取って代わられ「悲しみを湛えている。
その「お花の親子」によって、
バブリックアートの世界も明確に20世紀から21世紀の過去と未来の断絶を見せた。
七面倒くさい芸術の意味などどこかに雲散霧消し、
圧倒的金の力、物量、大きさなど、
昔ながらの個人の芸術家の範疇からかけ離れ、国や大企業のレベルになった。


