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第一回  写真家 海田 悠さん



  愛があればこそ

 
 

  写真家、海田悠さんのアトリエは、白金高輪のお寺に囲まれた静かな環境の中にあり、真夏なのになぜか涼しげで、アンティークの家具や植物がところどころに置かれ、とてもほっとする。


 「少年みたいな目してるでしょ?」今取り組まれている産業人魂作品展の100人のポートレート(顔)の中のある一人の大手上場企業の会長さんの写真を見ながら言った。「海田さん、こんな金にならない仕事して」と言われて、「じゃあもうけさせて」とさらっと返事したそう。


 でもほんとにいい顔してるでしょ?さらーっとした。



$Match maker-海田悠写真事務所提供





 
 
  





 

 -俳優さんみたいないい顔ですか?
役者なんかいい顔してません。笑

 ―今回は男ばかりですか?

今回は大企業の方ばかりだし、女の人は大きな会社のトップになれない。今の時点ではね。
女性の生理が許さないの。女の人は全ての人にやさしくてさ。女の人は生きているものを斬れないの。そこが女の人の強さなんだけど。男ってさ、自分の感情を殺すんだよ。そして殺すことによって自分も死んじゃうんだよ。女の人っていうのは生きるってことが使命なんだよ。うちのかみさんがさ、どうして男の人って自殺しちゃうんだろ。って言うから、男は常に問題を抱えててそれを打ち明けないんだよ。そしたら、おかしいよ。考え方を変えればいいのにねって。女の人は常にペラペラしゃべるから解消できるし、それが女性の考え方なんだよ。

 ―海田さんもそうですか?

僕の中に女の部分もあるけど、僕も男だね。男兄弟の中に姉がひとり。上から四番目に生まれて、生まれた時から生命力がなくて一人でじっとしていることが多かったよ。いつもやっとこさだから目標持たないと。組織人になんかなったら潰されちゃうよ。だからこういう仕事をやってるんだろうな。クリエーターってそういう人多いでしょ?

 ―どうでしょう?私もみんなの知っているわけではないですが、変わってる人はいるのかな?

変わっているというよりも、人とコミュニケーションできない人多いでしょ。恥ずかしいんだよ。その人と知り合いになりたいと思っても、なり方がわかんないだよ。だからそれだけ多感なんだね。多感だから世間で生きていくのが大変なの。先進国なんかより後進国のほうが生きやすいかも。スピードについていけないし、そんなのについていこうとしていたら、作品なんて作れない。今の時代は大変だよ。芸術が評価されてないからね。そして芸術家がお金なんかに走ったら、作品に感動なんか生まれやしない。じゃあパトロンっていうのは何かっていうと、お金なんかではもう自分を潤せない。じゃあ何に潤おせられるかっていうとアートなんだよ。でも世の中芸術家ばかりでも成り立たないよ。芸術家の存在をちゃんとわかってくれる人がいないとね。そして双方が信頼し合ってないとだめだね。魯山人なんかいい例だよね。

 ―彼はビジネスと芸術を成り立たせたってことですか?

ビジネスには長けてないけど、人の心を酔わして、お金をポーンと払わすっていうことには長けてた人でしょうね。でも、今の時代芸術のことをわかって理解を示す人はいるけど、お金は払わない。昔はそういうことを楽しめた人間が多かったんだと思うよ。だから人生の違う側面が見えたんだと思う。今は冬眠状態。みんな騒がない。生きてるって感じがしない。だけど生きてる人もいるよ。実際そういう人に会うと、元気をもらえてうれしいね。美人に会うのもいいけど、ほんとに前向きにまっすぐ生きる人に会うと今日も一日良かったって思うよ。障害があっても戦っていく人を見ると、みんな少年みたいな顔している。本人にそう言うと、「写真撮るからそういう風にいって上手いね」と言われるけど、ここに出てくる人みてごらん。みんな少年みたいな目でしょう。

 ―撮るのが上手いじゃないんですか?

あはは。。。そういうのじゃなくて生きてきたバラードなんだよ。


 ―でもほんとに今回は男の人のオンパレードですね。

男性っていうのは、こういうのやりたいって言うと賛同してくれる人が多いんだよ。
ちゃんと本も出して仕事しているけど、風貌が怪しいとも言われるけどね。笑

 ―その長髪はいつからですか?

1993年?若い時は五分刈りだったよ。そのあとがサラリーマン風。で、今から17年くらい前、いつも切
ってもらっている美容師さんからロングしてみたら?したことないの?という一言でそれ以来長髪。この間ちょっと切ったけどね。ほんとはね腰くらいまで伸ばしたかったの。おっさんになると腰まで伸びないんだな。笑 

 ―今の髪型は気に入っているんですか?

長い髪はポニーテールのように縛ったり、パーっと下ろしたりして表情が変わるんだよ。メイクはしないけど、これでメイクまでするともっと変わっていく自分があると思うよ。でもさすがにそこは男の部分が残ってるんだ。

 男の色気はかわいさ。

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 ―男の人への興味は?

男への興味は、姿形よりもその人が何だろうという部分には興味あるね。アーティストでも自分以外には興味ないって言う人もいるけど、そうではない。なぜなら人っていうのが好きだから。人間っていう顔とかね。顔からその人の思っていることや考えていることに惹きつかれていく。あの人きれいな顔ねっていう一般的なのとは違う。

 ―男の人は化粧しない人は多いけど、女の人は化粧してたほうがいいですか?化粧してたほうがきれいなのにとか思いますか?

身だしなみの問題だよね。どこまで女性としての意識を持ってるか。逆に言えば、男を目の前にして、自分はこうしてようとかさ、そういうマナーに対してこちらも敬意を払うよね。男も自分も女性を前にしてどうあるべきかって思うわけよね。言い悪いは別としてね。
女性も男性を前にして少なくとも恥ずかしくないっていう、そういう風にさせれると、受け手側としては、自分はちゃんと人間として見てくれてるんだなと思うわけ。そうされるとうれしいよね。意外に男はセンシティブなんだよね。なぜなら女性は美しくあってほしいというのがあるからね。それは形なんだけど、メイクをしようという女心を感じるんだよね。やっぱり女性の部分が残ってるってのがいいよね。触ってみたいとか、抱きたいという風に思われるほうがいいんじゃないの。

 ―ここに写ってる男のたちの色気は?

この人たちは色気あるよ。なぜかっていうとおれは偉いだろって言う人はいないの。みんな威張らないの。こんな人たちは簡単には名刺出さないしね。それに人のことをけなさない。僕らみたいに一般人はあの人はこうだねとかあーだよねとかいっちゃうから大きくなれない。彼らは余計なことを言わない。ビジネスで戦うってのはフェアじゃなきゃいけないし、企業努力ってのは大変だと思うよ。

 ―どうして今のご職業にたどり着いたのですか?
だって僕これしかないもん。

 ―何歳のときにカメラ持ったのですか?

23かな?

 ―それまでカメラ持ったことないのですか?

兄や親父が持ってたよ。普通の。高校時代に友人がペンタックスのカメラを持ってて、パチッとさせてもらった時は面白い音するなと。その後、23くらいの時に、知り合って二カ月くらいだった彼女と四国に旅行に行ったの。その彼女は今のかみさんなんだけど。その時、兄貴のカメラを持って行って、旅行から帰ってきて撮った写真を彼女と見ていたら、彼女がきれいね!上手よ。と言われて。

 ―じゃ奥さんに出会わなかったらにカメラマンにならなかった?

そうだね。
今思うと、ちっちゃいときは人間の顔をみるのにものすごい興味があった。この人はどんな人だろうって。敵かな?味方かな?この人怖い顔してるけど何をしてる人かなとかね。

 ―小さいときはおしゃべりだったんですか?

しゃべりません。ほんとに静かで居るのか居ないのか分からないような、一人で遊ぶ子でした。だから看護婦さんとか姉貴とかおばさんとか周りはいつも女の人ばっかりだった。だからかわいがられる術も知ってた。自分から率先して何かをやるってのじゃない。病弱だからね。生まれた時の体は豆腐のように真っ白で泣かなかったんだ。生命力なかったね。授業中もボーっとしていることが多かった。いろいろ考え事ばかりしていたよ。でも落書きでよく人の顔を描いてたよ。こういう鼻が好きだなとかって思いながら。

 ずっと遊んでたいと思ってました。。。

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 ―昔はなりたい職業とかありましたか?

何にもしないで本を読んで、好きな時に寝て好きな時に起きたりして。高校の時なんか、みんなが寝る
時間に何かするわけ。朝の散歩に出かけたりして。特に冬の時なんかいいよね。霜が降りるでしょ。田舎でさ、稲なんかが切られた田んぼを歩くとパシッパシッと音がするの。そして帰って寝てるとおふくろに起こされて学校へ行かされるわけ。

 ―朝の散歩ですか?

兄弟からも父からも変わってるって。変わってるからほっとかれたんだよ。雨の降ってるときに小屋を藁みたいなので作ったりしてその中に入るんだよ。父親からえらい怒られたよ。でもその中に入るのがものすごく好きだった。穴を掘ったりするのも好きだった。そこで生活する。学校から帰ってきたら、ランドセルを置いてよく穴に行ってそこに隠れてたよ。

 ―ひとり遊びばかりだったんですか?

兄たちの戦争ごっこにも参加したけど、必ず年上の頼りになる人のそばにいてかわいがってもらう。今でもその癖が残ってるよね。こういう性分で年を取っていくとつらいんだよ。若い時はかわいがってくれるけど、その時かわいがってくれてた人が死んでいっちゃって。
今度は若い人にかわいがってもらわないと。笑


 ―今の自分を支えているのは何ですか?

愛だよ。

 ―何の愛ですか?

家族、生き物とか友人とかいろいろあるけど、ようするに生きてるって感じると人って力がでてくるよね。動物が。それに愛情を注ぐと反応があるでしょ。そうするとすごく生きてるなって思う。人間って必要な時に聞いてくれる人がいるってことも大事。聞くだけでいいんだよ。男とか女とか関係なくね。そしてもう一つ支えてくれてるのは仕事。だって目標がなきゃ人間て死んじゃうもんね。目標があると苦しくてもどんどん乗り越えて進んでいけるしね。何もないと人間は輝かない。かみさんとかにもこの仕事がないともっと老けこんじゃってると思うよっていつも言われてるよ。自慢になっちゃうけど、かみさんっていうのは嫌なこともどんどん言ってくれるほうがいいから。

 ―この仕事を続けられるのは奥様のおかげですか?

そうだけど、僕のテーマは人の顔。人が生きてる時間って限られてるからいい顔を記録していきたいんだよね。それができるって、巡り合わせなんだと思う。周りのスタッフに恵まれて、新しいアトリエに移って、いい大家さんに会って、そういうのが重なっていくんだよね。私はこれ以外何もできないよ。

 ―辞めようと思ったことは?

辞めたら死んじゃいますよ。生きてる意味ないから。このアトリエに70過ぎの人が来て、パシッと一枚いい写真撮ってあげたいの。かっこよくね。間が抜けたような顔はいやなの。


 写真てさ、男の武器だと思う。


 ―思い出に残っている作品とか仕事について聞かせてください。

全部。色々顔の写真以外も撮ってるけど、全部かな。絶対これかなって思うものはあるのかな?自分にとって何かと言われると難しいね。いいと思って買ってくれる人がいる時のことも思い出すけど、ただそれが自分にとってどうかと言われると。でも追いつめられないといいものはできないね。

 ―写真撮るの好きですか?

嫌いじゃないけど、無駄な撮り方はしたくない。知り合いの葬儀でカメラのシャッターを切り続けている作家を見て、記録としてそしてプロとしてはこうあるべきなのかもしれないと思ったけど、私は嫌だ。そうなりたくないと思った。彼ほどに何でも撮るっていうことはできない。機関銃のようにパンパン撮るのじゃなく、ハンターのように一発で仕留める。だから普段からカメラは持ち歩かない。呼吸をするように写真を撮る作家はすばらしいとは思うが、私は考え込んで撮るタイプみたい。生産性が低いんですよ。一枚にかけているんだ。40過ぎの時に最初の本を出した時、撮影の相手は80過ぎの本田宗一郎さん。その時自分の気持ちをどれくらい相手に入れられるかということがあったの。

 ―撮られる人が撮る人に気持ちをゆだねるじゃなく?

そう。撮る人が相手に気持ちをゆだねる。多くの人が間違ってると思うけど、相手が80過ぎの人に何ができると思う?相手の土俵に入って、自分はただお願いしますってだけなんだよ。胸を全部貸してもらうんだよ。バーンとぶつかってお願いしますって。それがわかってない人はいなくなるんじゃないのかな。

 ―今後は?

したいことをさせてくれる人がいて、今後も支えてくれる。だから最後の5、6年は奥さんのしたいことをさせてあげたい。それ以上何も望むことはないです。人が事を成すのに愛がいるんだよ。愛情もないってことは何もないってことだよ。でも最近エロくないんですよ。自分がエロティックじゃないってことはものすごく問題ね。若い人がいうエロじゃないんだよ。結局男も女もいくつになっても色気だと思うの。男の色気はかわいさだと思うし、僕はそれを引き出すのは得意なの。そんなスーッとした作品はみんなにも受け入れられるの。そういった写真を撮りたいの。

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