5Rooms - 感覚を開く5つの個展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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神奈川県民ホールギャラリーで開催中の “5Rooms - 感覚を開く5つの個展” に行ってきました。

5r


こちらは、5人のアーティストによる、5つの部屋で構成された展覧会。
以前ワタリウム美術館で個展が開催された写真家の齋藤陽道さんや、

写真家の齋藤陽道


不要になったビニール袋や廃油から作った石鹸を使って作品を制作する丸山順子さんなど、

丸
山


今回の5人の出展アーティストは、作品が “心に響くか” という観点で選ばれたそうです。
確かに、どの作家の作品も、こうこうこういう理由で好きと説明できる感じではなく、
「なんか好きだなぁ」 とか 「なんか心地よいなぁ」 とか 「なんか惹きつけられるなぁ」 とか、
はたまた、「なんかゾワゾワするなぁ」 とか、「なんか変だなぁ」 とか (←稲川淳二?)
「なんか○○」 といった感想を抱くことが多かった気がします。
心や感覚で楽しむ展覧会。
星星


どの部屋も外れ無しでしたが、個人的にまず惹かれたのは、陶芸家の出和絵里さんのルーム。

出和絵里


あまりに薄く、あまりに白いので、パッと見は紙にしか見えませんが。

出和絵里
出和絵里


こちらは、ごくごく薄い磁土。
触れば、その質感に驚くことでしょう (もちろん、触ってはいけません)
そんな薄い磁土を組み合わせて制作された磁器は、
作品そのものの造形美もさることながら、作品が生み出す光と影までもが美しかったです。
磁器単体ではなく、磁器の置かれた空間全体を楽しむインスタレーション作品でした。
ニュータイプの磁器作品。


ニュータイプといえば、若き漆芸作家・染谷聡さんの作品も。

染谷聡


どこかで拾った小枝や石で漆芸作品を作るという染谷聡さん。

染谷聡さん
染谷聡さん
染谷聡さん


どの作品も、わびさび感が強かったです。
それだけに白い部屋でなく、和室に設置された姿も見てみたかった気がします。
ちなみに、染谷さんの作品の中で最もインパクトが強かったのが、《からくさ》 という大型作品。

からくさ
からくさ


赤い花をイメージした漆が蔓のようなものの先端で咲いています。
この蔓のようなものの正体は、工事現場で譲り受けた鉄線。
長い年月の間、外で放置されていたのでしょう。
だいぶ錆びていました。
・・・・・わびさび感、ハンパないです。


さて、個人的に今回の展覧会で一番心に響いたのが、小野耕石さんの部屋。

小野耕石さんの
小野耕石さんの


さまざまな高さの台に、小野耕石さんの作品が平置きされていました。

小野耕石


美しい色彩の抽象絵画のように思えますが、実は、こちらは版画作品。
といっても、ただの版画作品 (?) ではありません。
近づいて見てみると、誰しもが、その不思議なマチエールに驚かされることでしょう。
「ナニコレ!」 と。

ナニコレ
ナニコレ


制作方法そのものはいたって、シンプル。
しかし、作業は地道でハード。
手描きでドットの版を作り、それをシルクスクリーンで何十回、
多い時には約百回と摺り重ねることで、絶妙なグラデーションの立体的な版画が生まれています。

小野
小野
小野


上の3枚の写真は、すべて同じ作品を映したもの。
小野さんの作品は、見る角度や方向によって作品の表情がさまざまに変化します。
まるで万華鏡のよう。
いつまでも眺めていられます。

この小野耕石さんの空間を見るためだけでも、
神奈川県民ホールギャラリーに足を運ぶ価値は大いにアリ!
必見です。




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