セーヌの流れに沿って | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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昨日は、 “川” をテーマにした展覧会 をご紹介しましたが、

今回もまた、 “川” をテーマにした美術展。

昨日は、隅田川でしたが、今回は、セーヌ川

おフランスです。


“セーヌの流れに沿って―印象派と日本人画家たちの旅”


と題された、その美術展が開催されているのは、ブリヂストン美術館。

セーヌ川の流域を、上流から河口まで5つのブロックに分け、

それぞれを舞台に、印象派の画家や日本人画家が描いた絵画が、展示されています。

美術展会場を進むとともに、セーヌ川下りも楽しめるという画期的な美術展です。

星星



さすがに、その全作品を紹介するのは不可能なので。

このブログでは、ダイジェスト版・簡易版で、

セーヌ川美術下りを、お楽しみくださいませ。


まずは、 「第1章 セーヌ上流とロワン河岸」 から。


こちらで、群を抜いて光っていた作品が、こちら。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-サン・マメス



シスレーの 《サン=マメス》

言葉通り、光っていました。

穏やかな流れの水面がキラキラと。

ただ、この作品は、近くで観ても、ピンと来ません。

展示室めいっぱい離れてみることをオススメします。



少し下って、 「第2章 セーヌと都市風景」

セーヌ川が流れるパリを描いた作品が、多数紹介されています。

このブロックが、一番、フランスを旅している気分になれます。


僕の一押し作品は、アルベール・マルケの 《ポン=ヌフ夜景》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ポン=ヌフ夜景



とても1938年の作品とは思えないほど、現代的でスタイリッシュな作品。

写真のフォーカスをわざとぼかして効果を狙っているような。

ちなみに、この作品の右には、

同じくアルベール・マルケの 《ポン=ヌフとサマリテーヌ》 という作品が。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《ポン=ヌフとサマリテーヌ》



構図が同じなので、日中と夜が対比出来て、面白かったです。



こちらの第2章から、もう1点スタイリッシュな作品をご紹介。

大正時代に活躍した挿絵画家・蕗谷紅児の挿絵の原画です。

《挿絵原画 (巴里の散歩) 》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《挿絵原画 (巴里の散歩) 》



ケータイの待受画面にしたいくらいに、スタイリッシュな一枚。

大正時代に人気があったというのも納得です。



「第3章 印象派揺籃の地を巡って」 に参りましょう。


こちらでは、ブリヂストン美術館のコレクションで、

僕の中では、一、二を争うくらい好きなヴラマンクの 《運河船》 が展示。


運河船



このおもちゃみたいな色合いが、妙に和みます。

今にも汽笛が聞こえてきそうな、動きのある一枚。



この章で、気になったのは、

中西利雄の 《トリエール・シュール・セーヌ》 という水彩画。
アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-トリエール・シュール・セーヌ



こちらは、千葉県立美術館の所蔵品だそうで。

かねがね、パッとしない千葉県立美術館に、

千葉出身のアートテラーの身としては、肩身の狭い思いをしてきましたが (笑)

「イイ絵持ってんじゃん!」 と。

《運河船》 に負けず劣らず、楽しげな雰囲気の絵です。



さて、セーヌ川下りは、 「第4章 ジヴェルニーと芸術家村」 へ。

ここでの必見の一枚は、間違いなく、こちら↓


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-セーヌ河の朝 (ジヴェルニーのセーヌ河支流)



モネの 《セーヌ河の朝 (ジヴェルニーのセーヌ河支流)》

こちらも、冒頭で紹介したシスレーの 《サン=マメス》 同様、

展示室めいっぱい…なんでしたら、隣の展示室くらいから離れて観るのがベスト。

こんなにも豊饒な絵があるのかと、感動する一枚です。



セーヌ川の旅も、いよいよ佳境。

「第5章 セーヌ河口とノルマンディー河岸」 に辿りつきました。


こちらで気になったのは、モネの 《アヴァルの門》 をはじめ、


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-アヴァルの門



エトルタの断崖を描いた作品が、多数展示されていたこと。


(参考写真)
アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-エトルタ



確かに、この独特の形は、

芸術家ならずとも描きたくなるものがあります。

火サスでも、こんな崖はみたことがありません。

やっぱり、フランスの火サスでは、ここが舞台で。

フランスの船越英一郎が、フランスの片平なぎさとともに、

フランスの石野真子による犯行の自白を聞いているのでしょうか。



・・・と、変な妄想は、さておきまして。

クールベやマティスによるエトルタの絵とともに、

日本人作家のエトルタの絵も展示されていました。

その中で、特に気になったのは、

どこかユーモラスな印象の高畠達四郎の 《エトルタ》 と、


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-エトルタ



香月泰男の 《エトルタ》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-エトルタ



縦長の画面で、エトルタを描くという斬新さに惹かれました。

そして、今回展示されていたどの風景画とも違って、

独特の重苦しいオーラが漂っていました。

“風景画=スナップ写真” というイメージが強かったのですが、

こんな風に、風景で心象表現をすることも出来るのかと勉強になりました。



楽しかったセーヌ川の旅も、これにて終了。

美術館を出ると、


「あ、ここは、フランスじゃなくて、京橋…」


という現実が待っています (笑)





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