円山応挙 空間の創造 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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三井記念美術館で開催中の “円山応挙 空間の創造” に行ってきました。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-円山応挙 空間の創造



円山応挙と言えば、江戸時代の画家を代表する超ビッグネーム。

(どんな画家なのか詳しく書いた記事は、こちら

そんな応挙の美術展だけに、

平日ながらも、三井記念美術館は美術ファンで大混雑。。。

普段は、三井記念美術館の展自室の狭さは、

さほど気にならないのですが、今回ばかりは気になりました。


“展示スペース狭いお(´;ω;`)”



さらに。

今回は、円山応挙の “空間の画家” としての側面をフィーチャーした美術展。

大きな襖絵やら、大きな屏風絵やらが、

「ドドドン!」と、ダイナミックに展示されております。

文字通りの大きさだけでなく、

応挙の非凡な画力ゆえ、周囲の空間を支配するほどの大きなスケール感を持つ作品たち。

それ故、作品に反比例するように・・・


“やっぱり展示スペース狭いお(´;ω;`)”


と、思わずにはいられませんでした。。

応挙の作品たちが、

無理やり狭いスペースに押し込まれているようで。

何とも窮屈な印象を受けました。。。



展示作品が良かっただけに、残念でなりません。

星星

もっと広々とした場所で、

今回の作品を観られたなら、おそらく3ツ星でした。




ではでは、いつまでも、狭い狭いとグチグチ言ってても仕方がありませんので。

ここからは、こちらの記事のweb面で、

のびのびと作品を紹介していきたいと思います。



まず、最初に足が止まったのは、 《眼鏡絵 三十三間堂通し矢》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-三十三間堂通し矢



眼鏡絵とは、レンズを備えた “のぞき眼鏡” を通して見ると、立体的に見える風景画のことです。

言うなれば、江戸時代の 『アバター』 体験。

ちなみに、この眼鏡絵を成立させるには、

当時の日本には無かった遠近法で絵を描く必要がありました。

円山応挙は、日本に遠近法が根付いていない時代に、

こんなにも、 “ザ・遠近法!” な日本画を描いていたのですね。

だいぶ時代を先取りする男です。



そんな誰よりも斬新な視点を持つ応挙が、

さらに斬新な視点で描いた作品がこちら↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-淀川両岸図巻



《淀川両岸図巻 (部分) 》 です。

一見すると、普通に淀川を描いただけの絵に見えますが。

手前 (下部) の風景を、よく観ますと、逆向きで描かれているのがわかります。


・・・・・・・・・なぜ?


実は、この絵。

向こう岸を描いたように見える画面上部は、右岸の景色。

画面下部が、左岸の景色となっているのです。

川の真ん中を歩けば (実際は立てないから、船に乗りましょう) 、

右には右岸が、左には左岸が流れて見えるはず。

それをどうにか2次元で表現すると、こんな力技のような絵巻になってしまうのですね。

いやはや、とんでもないことを考える男です。



続いては、今回の展示のテーマ・空間を創造するアートの襖絵です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-松に孔雀図襖



“応挙寺” とも呼ばれる兵庫県にある大乗寺。

そのお寺から、この展示のために、 《松に孔雀図襖》 全16面が上京中。

この寒くなる時期に、襖を取り外されるなんて、そんな殺生な。

「孔雀=ド派手な鳥」 というイメージですが、

この襖絵の孔雀は、墨一色で描かれています。

金地に墨一色というモノクロームの世界ながら、

画面の前に立つと、驚くほど色鮮やかな印象を受けました。

何だかマジックを観ているような。そんな不思議な襖絵。



そして、何よりも、今回の目玉は、こちら↓


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-雪松図



三井記念美術館のマスターピース 《国宝 雪松図屏風》 です。

本やネットなどで何度も観たことはありますが、本物を観るのは、今回が初めて。

国宝の指定は伊達ではなく、期待していた以上に、素晴らしい作品でした。


「何て美しい白色なんだろう!」


まず何と言っても、雪の白さに目を奪われます。


・・・が、しかし。


この雪は、特別な顔料を使って描かれているわけではありません。

というか、むしろ何も描かれていません。

はい。実は、この雪の部分は、紙の地そのもの。

言ってしまえば、塗り残しのようなもの。

この塗り残しが、金泥で描かれている背景との対比によって、真っ白な美しい雪に映るのです。

またしても、応挙の色彩マジックにしてやられました。


また、色彩だけでなく、構図にもマジックが。

画面の中央に余白を広げることで、

二本の松の間に、どこまでも奥行きがあるような印象を受けました。

この作品の前に立つと、吸い込まれそうになること必至です。



5分以上、 《雪松図屏風》 に向かい合っていた僕は、

確実に、あちらの世界 (どちら?) に行きかけました。

帰って来れて何よりです (笑)





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こちらの世界に帰ってこられたからです (笑)
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