太極拳をやっていた時期が2年ほどある。
若くて美人な先生が教えてくれる、という大変不純な動機からだったのだが、やることはちゃんと真面目にやっていた。
多分自分を鍛える、という方向から、自分を整える、という方向に変わったのは、これがきっかけだったのではないかとふと思う。
そのときになんども言われたのが「立身中正」ということ。
簡単に言えば、どんなことをしているときも「まっすぐに立つ」ということである。
偏らずにまっすぐでいられれば、いつ何時どんなことが起こっても、すぐに対応できる。
片足を高く上げながらそれをするというのは、初心者にはなかなかに難しいことなのだが…。
太極拳に限らず、人生でもまっすぐ立つことというのは、臨機応変かつ軽やかに生きるメソッドなのだと思う。
嬉しいことがあったら喜びすぎず、辛いことがあっても悲しみすぎず、心の中心に立つ。
ネガティブなときに無理にポジティブになろうとせず、なるべくニュートラルよりなネガティブでいること。
そうすれば勝手にニュートラルに戻る。
心の芯、まさに「中心」なわけだが、を意識すること。
それだけで感情や外からの刺激に惑わされることが少なくなり、より自由に生きられるようになる。
若いときは刺激を求めて極端に走っていて、中庸なんて退屈でつまらないと思っていた。
今は中庸にとどまることで得られる自由な感覚が面白くてたまらない。
そう思うと、2年間という短い間ではあったが、あの先生からは太極拳だけでなく、人生を楽しく生きるコツみたいなものも教わったのだなぁ。
結局名前を聞くこともなかったが、今も元気にやっていらっしゃるだろうか。