つまりマジシャンが思ってるよりも、お客さんは不思議と思っちゃいない、ということだ。
タネがわからないまでも「何かやったな」というのは伝わってしまう。
マジシャンがいるときは何も言わないかもしれないが、マジシャンが去った後、あるいは店を出るときにポロっと本音が出てしまうものである。
そしてこれが一番恐ろしいのだが、お客さん本人は意識で気づいてなくても、潜在意識レベルで「このマジシャン、ショボい」と思われることだってある。
そういう人は表面上は激賞してくれても、二度と会いにきてくれることはない。
ちょっとやり方覚えただけで、お金を取れる芸っていうのは、実際には存在しない、ってことだ。
だからこそ手を尽くし、心を尽くして、アクトの完成度を高めていく。
そうやって初めて、本当の不思議と楽しさを届けることができる。
最悪でも、お客さんはわかっていても気持ちよく騙されてくれる。
それがお客さんに対するリスペクト、ってものだ。